garura07

ウインド・リバーのgarura07のネタバレレビュー・内容・結末

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

演出、脚本、演技の三拍子揃った傑作。

先住民保留地というアメリカであってアメリカでない土地を舞台にした本作。極寒の雪国の圧巻と絶望的な映像表現は観る者に“異国情緒”を味合わせるが、それだけでなく細やかな表現も行き届いている。序盤にチラリと映る逆さまの星条旗がそれで、我々が知るアメリカとは違う別の世界があること、本作が現代の西部劇であることを視覚的に、かつ不気味に提示する。さらに別のシーンでは足下に映る小さな虫がこの世界の大きさを物語る。
また終盤の採掘所のトレーラーハウスのドアのシーンやジェーンがウェアに着替えた直後にランバートの娘の写真を挟むなど、編集の妙が光る。

そんな世界に非先住民でありながら馴染み、根付いている主人公ランバート。彼の所作や言動に大きな説得力を与えるジェレミー・レナーはキャリアハイと言ってもいい演技を発揮。「アベンジャーズ」にも「ミッションインポッシブル」にも顔を出さなかったがジェレミー・レナーのファンはこの一作で今年は乗り越えられそうだ。先住民役のギル・バーミンガムやグレアム・グリーンもそれぞれ印象的で、作品を引き立てる。

 娯楽性が高い社会派作品として成立している本作の肝は脚本だ。サスペンスとしての本筋の出来は勿論のこと、サブプロットであるマーティンの親子関係は胸を熱くさせる。映画の序盤では可哀想としか思わなかったナタリーの印象が終盤にひっくり返る構成はお見事。最後に提示されるテロップが示す通り、このような事件は後を絶たないだろうし、非常に根深い問題だ。本作の着地点は被害者女性たちへの敬意と名誉回復、そして過酷な環境下で苦しみと向き合い、意志を持って生きる人々へのリスペクトだ。
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