あでゆ

デッドプール2のあでゆのレビュー・感想・評価

デッドプール2(2018年製作の映画)
4.9
のんきに過ごすデッドプールの前に、未来から来た“マシーン人間”のケーブルが現れる。大好きなヴァネッサのためにまっとうな人間になると決めたデッドプールは、ケーブルが狙う不思議な力を持つ少年を守ろうと、特殊な能力があるメンバーだけのスペシャルチーム「エックス・フォース」を作る。

大傑作。作品の全体的なテンションは言及される通り『ターミネーター』をモチーフにしていると思われるが、個人的にはむしろ『LOOPER』により近い印象。続編で前作よりもコンパクトになって、主人公の性質にフォーカスする構成っていうのはアメコミ映画の中でも『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー Vol.2』ぽくもあると思う。

デッド・プールは『ローガン』をズルい映画だと表現する。死ぬことで感動を呼ぶ作品はウケが良いが、自分に限っては死ぬことができないので死ぬ方法を模索しなければいけないという。

一方、デッド・プールは死ねないが、ヴァネッサは死んでしまう。
ヴァネッサの死亡時は普通に悲しかったんだけど、その悲しい気持ちを吹き飛ばそうとする007のようなOP。自分は泣いてしまったんだけど、笑ってしまって、どういう感情になればいいのかわからなくなったのははじめての体験だ。ところどころでこうやってウェットなシーンを挟むことによって、感動と笑いのハードルを自在に操るのが天才的だなと思う。
個人的にはヴァネッサが死んだときには真顔、無言になって、犯人と一緒に車に轢かれるっていうところがベストシーンだった。

ヴィランはジョシュ・ブローリン演じるケーブル。デッド・プールの影のような存在で、彼は家族を喪っているが、その恨みを晴らせていない男。
いやこの作品にヴィランは存在しない。アメコミ・ヒーロー作品であるが、この作品には本当の意味で悪質な人間はいないのだ。あえて言えば施設のボスだろうか。そういう意味で本作の異様さは『バットマン・リターンズ』にも親しい、ミュータント同士の存在を慰め合う話でもあるし。
実際、ヴァネッサを殺されたときはデッド・プールも復讐を果たしたし、だからこそ彼のことを否定しきることもできないつくり。本作は誰のことも悪いと切り捨てることはできないんだ。

メインのプロットとしては将来ヴィランになる子供に対して、ヒーローはどうしてあげればよいのか?というもの。その子供を説得するという決断を下した結果、彼は最終的にXフォースという家族を築く。ヴァネッサと子作りをして遺伝子を継いだ子供を残す予定だったけど、彼はXフォースを通してラッセルというミームを受け継いだ子供を作ることにもなるからだ。
この異端者を認めてあげるっていうのは、前作でヴァネッサにデッド・プールがされたことだからこそできるんだよなとも思う。だからヴァネッサがいなかったかもしれないデッド・プールにとっては、ラッセルも彼の影のような存在になっている。

全体のパロネタとしては前作よりもアメコミ中心になった模様。ネタとしてはすごくわかりやすかったかな。忽那汐里ファンなのでそこも良かった。
あとデヴィッド・リーチだけあって全体的にアクションはとても良かった。

とはいえ、個人の好みとしてはラストでヴァネッサの死を含めて本当に全て丸く収まってしまったため、結果として感動がムダになってしまったのが惜しい。今後のリアリティラインが下がってしまったところも含めて。
本作はファミリー映画であるからこそ、これは全員を救う物語だというのはわかるし、ウェットでは終わらないのがらしくもあるけども。
どうでもいいけど、ラストはMGSVだったな。
「仇を討ったぞ!アァ~~~」
あでゆ

あでゆ