せぃ

田園に死すのせぃのレビュー・感想・評価

田園に死す(1974年製作の映画)
4.2
目の前で展開される絵面のすべてが刺激的なのに、エロもグロも全面的には出てこない。とても尖った絵空事のよう。

自分が未熟過ぎて言語化できないのが悔しいところではありますが、言語だけでは足りないからこそ「映画」なのだと思いました。見も蓋もないですね。
詩人、文筆家としての一面をもつ寺山修司が、(非常に絵画的な)映画で捉えようとしたものは何だったのか。一般的には「過去の虚構化」と言われています。真でしょうか。過去の虚構化とは、すなわち記憶の編纂ということだと作品の中で語られていました。思い出を美化をするということを、私たちは無意識のレベルで行っています。しかし寺山は、記憶の狭間で苦しんでいました。そして毒々しいまでの美しさを、過去の中で描こうとするのです。
寺山の美意識はかなり独特で、特殊性癖のような映像が延々と続きます。感覚が麻痺して普遍の主題を見出しそうになるのですが、実は真が別のところにあるような気がしてなりません。読み解けなくて悔しいので、あと何回か見ます。
多くを語られ過ぎた作品にも関わらず、いまだ力を失わずにいる凄い作品です。詩人にしか作れない、批評に負けない作品です。
肉眼で、みよ。
せぃ

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