とぽとぽ

淵に立つのとぽとぽのレビュー・感想・評価

淵に立つ(2016年製作の映画)
4.5
やばいんです。これはすごい、すごすぎる。見入ってしまう、やってくれたなって感じ。淡々とした日常の中に一つの得体の知れぬ異物が投げ込まれることで波紋が広がり、壊れた家族の間に迫っていく。その異様さが怖い、不気味さが恐ろしくなる。露骨なほど分かりやすく背筋に悪寒が走るし、一方でそのヘンテコさと独自のテンポに時折不謹慎ながらおかしくもなってしまうことすらある緩急の付け方。射し込む光にできる影のように狂気が迫り、ある時を境に全く別の見方をしてしまう。例えば韓国映画の傑作のようにドロっとしていてながらも、結局のところこの監督にしかなし得ない深田節に感嘆の溜息。八坂のように心に棲み憑く。
言葉の持つ力も鋭利な刃物のように尋常じゃない、冗談や嘘なんかじゃ済まない。キャストの面子が個人的にツボだし、その俳優陣の演技もやはり実に見事(個人的に一番好きな頃の太賀?)。いつか見た『ほとりの朔子』(←これも今見ると違って見えるのかな)での深田晃司監督への苦手意識はどこへやら、惹き込まれる。鈍器で殴られるような衝撃と摩訶不思議な迷路にでも迷い込む感覚。以前から本作のことは気になりつつ、けど踏ん切りつくほど気持ちも高まらず、なんだかんだで見る機会ないとか後回しにしてきたけど、もっと早く見ればよかった。これは『よこがお』も見なくちゃだな。

「8年前、俺達は本当の夫婦になった」目の前で殺すため。ウソ「それで気が済むなら俺死にますよ」「気安く言うなよ、死ぬ気もないのに」
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