享楽

ガール・オン・ザ・トレインの享楽のレビュー・感想・評価

4.3
冒頭、電車内での描写におけるレイチェルの表情から窺えるように(特に目元のくま)、彼女は何かに病んでいる。「私は想像力が豊かだ」とスケッチを書きながらナレーションする彼女だが、その意味は物語の展開の中で変遷してゆき、結論から言ってしまって最後は哀しくも「私は被害妄想力が豊かになってしまった」ということになり、この事実性を突き付けられた鑑賞者は唖然と哀しみにくれるしかなくなるだろう…。
歪曲された記憶の表象が事実とのズレを孕んでしまっている、要は記憶の書き替えをミステリー性に利用した内容だ。現在軸から6カ月前という過去へと転回。そこから現在軸へと近づけていく手法(形式)だった。映画の展開はレイチェルの治療過程、すなわち彼女が目撃した真実へと進むことだが、ここまで前後が反転すると、彼女が如何に自分を責めていたのかと驚愕する。
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