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アイバーソン:偉大なるNBAプレイヤーの軌跡のEDDIEのレビュー・感想・評価

4.0
フィラデルフィアの英雄アレン・アイバーソンの成功と挫折。彼はフィラデルフィアのアイコンではあったが、ドキュメンタリー全体を通して幾多の苦難を感じさせた。スーパースターの苦悩…プライドが大きく邪魔をする。

2000年代の代表的なNBAスターのアレン・アイバーソン。私の青春時代はこの“ジ・アンサー”AIか驚異のスラムダンカーの“エアカナダ”ビンス・カーターかシャック&コービーのレイカーズコンビが席巻していました。
映画ファンが多いFilmarksということもあり、アイバーソンのことを少し解説しておきます。
彼は公表183cm(実際は180cmにも満たなかったと言われています)という小さな身体で、平均2m越えのNBAの世界にドラフト1位で飛び込み、新人王や得点王、シーズンMVP、オールスターMVPなどなど、数々の栄冠に輝いてきました。
スターが彼を除き誰1人としていないフィラデルフィア・76ersをNBAファイナル進出に導いたことも偉業です。これの何が凄いかって、きっと彼がいなければプレイオフ進出すら叶わなかったようなロールプレイヤーばかりだったのです。ラリー・ブラウンHCという名将と彼の2人によって、76ersはNBAファイナルという大舞台に立つことができたのです。
じゃあこれだけの素晴らしい選手、きっと順風満帆な日々を送っていたに違いないと思いますよね?ただ、このドキュメンタリーを観ると彼がどれだけの困難に見舞われ、苦しんできたかっていう方が多く映し出されています。

彼は学生時代から地元では有名な才能溢れたバスケプレイヤーでした。NBA入りも確実と言われている中で起こった暴行事件。周りの大人たちは自分を貶めるためなのか、なぜこんな苦しみを与えるのか。
しかし、彼の訴えは届かず刑務所行きに。
パーソナルな部分は育ってきた環境が大きく影響します。彼はNBAで成功する前、つまり子供〜学生時代の貧しい生活や幾多の試練を味わってきたからこそ、ハングリー精神と絶対に負けないという不屈の闘争心を持っていたんだと思います。

途中のエピソードで入っているNBAオールスターなんてまさに彼の闘争心を表すにわかりやすい事象です。
お祭りムードのオールスター戦。決して真剣勝負とは程遠いファンを喜ばせるためのパフォーマンスに終始しており、ただアイバーソンの率いるイーストチームは20点以上の差をあけられて敗戦濃厚だったんですね。
そんなお祭り試合においても「負けたくない!」という思いのアイバーソンは果敢にゴールに挑み続け、なんとその20点以上もある差をひっくり返し、イーストを勝利に導いたのです。途中から真剣勝負の様相になったオールスター戦は史上最高の熱戦となりました。

そして、彼の前に立ちはだかった幾多の苦難。試合では例え故障していようが全力で挑む最高のパフォーマンスでチームを牽引し、またファンを熱狂させます。
ただ記者から飛んでくる質問は「練習をサボったそうですね」「本当に練習をサボったんですか?」など、練習に関する質問ばかり。彼はイライラしながら、「君たちは試合を観ているのか?」と返答、つまりは最高のパフォーマンスを本番で見せてるんだ、そんな練習ごときでとやかく言うなよと言いたかったんだと思います。
プライド高い彼はチームの規律に従うことなく、和を乱す、しかしリーダーたる者このままではチームは看過できなかったわけですね。
アイバーソンはフィラデルフィアでは熱狂的な人気を誇ります。ただフィラデルフィアからデンバー、デトロイト、メンフィスとチームを長続きすることなく転々としたのは彼の性格が災いしてしまったのですね。

彼はあまりにもプライドが高く、チームに迷惑をかけ、事件も巻き起こすなど、ニュースにも事欠かない人物でした。
そんなマイナスイメージも大きいものの、バスケには全力で取り組み、バスケ界のカルチャーを変えるほどの影響力も持っていたのです。
R&Bスタイルのファッションやコーンロウの髪型、タトゥーは彼がNBAに積極的に導入したことで、今や彼のようなスタイルのNBA選手は数多く見られます。
アイバーソンがNBAの文化を変えてしまったんですね。お手本でもあるはずのNBA選手が全身にタトゥーなんて有り得ない。そんな言葉もどこ吹く風なわけです。

間違いなくNBAの世界を変容させ、さらにファンを熱狂させ、全世界から多くのAIファンが彼に声援を送ります。

「ここには最高の歌がある、ファンの声援だ」

アイバーソンが打ち立てた数々の記録だけでなく、文化にまで与えた影響と偉業の数々。彼のパーソナルな部分は悪影響を与えはしましたが、決して彼の偉業をかき消すものではありません。
アイバーソンが偉大な選手であることは間違いありません。
EDDIE

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