チィ

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめのチィのレビュー・感想・評価

3.8
『ヴァージン・スーサイズ』でいちばん魅惑的なキャラクターを演じていたあの頃、『マリー・アントワネット』の天真爛漫なあの頃、そして今作でついに自由奔放から閉じ込められる側になったキルスティン・ダンスト。彼女の演技に胸が締め付けられて、時の経過に怯え見るのが辛かった。けどソフィア・コッポラが誰よりも痛感しているだろうし、キルスティン・ダンストという女優の成長を被写体として収め続けたいんだろうなという意思も感じた。"若さ"をエル・ファニングにとられたリアルさとかつての位置への嫉妬、女性の陰湿な部分を役としてぶつけた成長の作品が『ビガイルド』のテーマとも沿って。次作のキルスティン・ダンストの役がどのようなものになるのかいまからとても楽しみ。

ソフィア・コッポラ作品は何よりファーストカットを楽しみにしているんだけど、奇抜さはなく珍しくよくある始まり方だったな。と思いつつラストカットとセットで物語の表紙と裏表紙のようなまとまりのある不思議な印象だった。北部南部の物語というよりは、ひとつの森の中に佇む禁断性のある屋敷の話で淡々とジワジワと進む全ての展開が屋敷内でおさめられていたことが好きだった。何よりどんな年齢でも異性に対する態度が異なる表面はみんなお友達だけど簡単に裏切るのよ…感が嫌いで苦手で素晴らしかった…。苦々しい気持ちになるのが正解だと思っているので、女って怖いし、ソフィア・コッポラがいちばん怖くて上手い。
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