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ロスト・バケーションのYOUのレビュー・感想・評価

ロスト・バケーション(2016年製作の映画)
3.8
ジャウム・コレット=セラが監督を務めた、2019年公開のサバイバル・スリラー。
ジャウム・コレット=セラの7本目の監督作となる本作では、浅瀬の岩に取り残された主人公ナンシーが人喰いザメの襲撃から生き延びる為に孤軍奮闘する姿が描かれます。巨大人喰いザメによる恐怖を描いた本作ですが、作品自体は「パニック・ホラー」というよりもむしろ「シチュエーション・スリラー」や「漂流サバイバル映画」いう印象が強いです。登場人物は基本ブレイク・ライブリー演じる主人公ナンシーのみで、物語は人喰いザメ以外にも寒さや飢え、満潮など様々な苦難を強いられる彼女が医学生としての知恵とスキルを駆使してサバイブしていく様子にフォーカスされています。これが成立するのはセラ監督の端的かつ的確な演出とブレイク・ライブリーの演技力・求心力があってこそですし、こうした「独演サバイバル映画」という枠組みを持つ本作にはリドリー・スコットの『オデッセイ』とも非常に似た面白さが感じられます。またジャウム・コレット=セラと言えば『エスター』や『アンノウン』『フライト・ゲーム』などで度々描かれている「ニューロティック・スリラー」としてのサブジャンルが特徴的ですが、本作の場合はそもそも登場人物が1人なのでその側面は浮き出ていません。しかしニューロティック・スリラー最大の肝である「誰も信じてくれない」という部分を本作では「助けてくれる人が誰も居ない」という形に落とし込んでおり、やはりセラ監督なりの一貫性やプロデュース力は本作からも強く感じられました。

最新作『ジャングル・クルーズ』やリーアム・ニーソンを主演に迎えた4本のアクション作品、そして本作も例外でなく、いずれもアーティスト気質というよりはやはり”職人監督としての風味”が強いセラ監督作ですが、毎作与えられた題材に対する最大限の尊重と謙虚な姿勢が伺えます。多分セラさんはもの凄く真面目な方なんだと思いますよ(笑)。それでいて随所には彼独自のテイストも散りばめられており、「これはセラ監督作だ」としっかり分かるようなバランスにも仕上がっています。今回で言えばスマホや時計を使ったスタイリッシュなルックが印象的ですが、これは前作『ラン・オールナイト』同様「王道ジャンルにおいても必ず独自のモダン演出を欠かさない」というセラ監督なりのスパイスであり、同時に単調かつ説明的になりがちな物語進行に対する適切なフォローにもなっているという、これぞまさに職人技!もちろん好き嫌い合う合わないはあるにせよ彼の仕上げ方は職人監督として最良のバランスだと思いますし、自分はやはり毎回興味を惹かれてしまいますね。終盤の「こんなのありえねぇよ」感も込みで一見の価値は大あり!






















































































































尺の短さで更に加点。『COP CAR/コップ・カー』然り『ドント・ブリーズ』然り、尺も人物も舞台も最小限な映画、大好き!
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