再見。
今では定番となったシェリダン印の一作。
現代アメリカの夢破れた姿と、追う物と追われる者。
立場は違えどお互いに鏡像となる者たち。
渋い犯罪ドラマ、所謂現代の西部劇。
「三回イラクへ行ったが何の援助もなし」
印象的な落書きから始まる長回しの導入。
田舎の小規模犯罪と思わせて、という巧みな導入から引き込まれる。
荒野とゴーストタウンのような廃れた街。
金貸しの看板ばかり。
本当の悪は誰なのか。
「貧困という病」というセリフが指摘するアメリカの姿。
伝染する貧しさ、本人たちの意思ではとても抜け出せない格差社会の負の連鎖。
デヴィッド・マッケンジーとジャイルズ・ナットジェンズが突きつけるそれは煉獄のよう。
『グランド・ジョー』にも通ずる。
西部劇というより南部劇か。
哀愁を漂わせつつ常に諦めのような、醒めた視線を感じる。
最後も希望がありつつ、罪からは逃れられないという苦味。
見ている物もその煉獄へ放り込まれる。
そんな煉獄で命を燃やす男たち。
ジェフ・ブリッジスの快演が光る。
平気でヘイト発言連発する老兵。
しかし悪ぶる強がりの裏には孤独が、という十八番のキャラ。
マジックアワーと毛布とネオン。
空虚なマイホーム。
ボケてるようで追跡者としてのセンスは一級という美味しさ。
ネイティブアメリカンの相棒の理性的で、ヘイトジョークに辟易しながらスマートに返す姿も微笑ましい。
田舎のアウトローと見せかけて知能犯なクリス・パインと今回は「草原の支配者」になったベン・フォスター。
『ローン・サバイバー』では「死神」を名乗っていた。
次世代への負の連鎖を断ち切ろうと、各々の役目を全うするその姿。
そうなるしかなかった暴力的な兄と、理知的で子供のために尽力する弟。
それぞれはまり役。
兄弟の、言葉はいらない強固な絆もアツい。
重いテーマだし派手さや爽快なカタルシスはない。
しかし、西部劇としての見せ場や強盗のプロセス、追跡劇の緊張感などジャンルとしての面白さもきちんと配置されている。
タイトな時間(102分!)で描き切っている点も地味に優秀。
演出と演技、画で語る。
過剰な説明は不要。
質実剛健。