田辺誠一監督作品。99年度ベルリン国際映画祭フォーラム部出品。
篠田昇の弟子である福本淳が撮影を担当。行定勲が演出補として参加。全編ビデオ撮影。妻と愛犬に去られた男のうつろな日々を日記風に綴った作品。
岩井俊二作品や天使の楽園、ラブ&ポップ、エヴァの実写パートなど、デジタルビデオの荒々しい質感の映像が観たくて、VHSを探しだして鑑賞したのだけど… 技術や志が全く伴っていない稚拙な映画だった。
ただ不思議なのは、アール・ブリュット的なピュアさを一貫して醸し出していて、90年代後半に蔓延していた空気感や性格の悪さを感じなかった。
収拾がつかない物語を終わらせるために、突然ドッグフードを食べるシーンは笑ってしまったし、最後に流れるジェーン・バーキンのJANE Bは、狩野英孝的な良さが溢れていた。
『関心領域』の残響が頭の中でうごめき続けていて、結構しんどい気持ちを引きずっていたのだけど、この映画に和ませてもらえてすごく助かった。