半兵衛

くたばれ!ヤンキースの半兵衛のレビュー・感想・評価

くたばれ!ヤンキース(1958年製作の映画)
3.5
原典がファウストとは思えないくらいゆるゆるの展開だったり、深刻さがゼロの登場人物や悪魔には魂を売ったけれど良識ある主人公などいかにも古き良き50年代のアメリカン・ミュージカルといった映画なんだけれど、ボブ・フォッシーの振り付けが凄く躍動的で楽しく見られる。

なんといっても一番の目玉は、中盤で主人公を誘惑する魔女演じるグウェン・ヴァードンとボブ・フォッシー本人(実生活でもこの二人は夫婦)が舞台でダンスするシーン。二人とも宙を飛んでいるかのような躍動的なダンスをキレキレの動きで全身で披露し、もはやこの世のものとは思えないレベル。こんな凄まじいダンスならどんなにミュージカルに興味がない人でも目が釘付けになるはず。出演者もこのダンスに興奮し、主人公の野球選手が「フォッシー、凄いよ!」と言いながら彼と熱い握手をかわすほど。ただ映画のピークがここまでなのがなあ、後半の魔女と主人公のところも『シカゴ』や『キャバレー』みたいで好きだけれど、神的なダンスに比べると若干おちるかな。

あと主人公を誘惑する悪魔と魔女の関係がどうみても風俗嬢とチーフマネージャーのそれにしか見えない、魔女も悪魔のことを「チーフ」て言っちゃっているし。
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