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くたばれ!ヤンキースのみおこしのレビュー・感想・評価

くたばれ!ヤンキース(1958年製作の映画)
3.9
ボブ・フォッシーの初期の振り付け作品であり、巨匠スタンリー・ドーネンによるミュージカルの隠れた傑作。

ごく普通の中年男性ジョー・ボイドはテレビで野球中継を見るのが生きがい。そんな彼に妻のメグも愛想を尽かし始めていたがそんなことはお構いなしで今日もワシントン・セネタースの勝利を願っていたが、突然現れた悪魔アップルゲイトと契約を交わし、野球選手ジョー・ハーディに若返ってセネタースの宿敵ヤンキースを打ち倒すことになるが...。

とにかく秀逸な振り付けの連続で、期待以上に素敵なミュージカルでした!
砂埃を捲き上げながら野球選手たちがマウンドで踊るという滅多に見られない演出に思わず度肝を抜かれましたが、天才フォッシーの振り付けのお陰でとにかく楽しいダンスシーンになっています。
野球のみならず、悪魔アップルゲイトと魔女ローラの怪しいダンスや、酒場のシーンでの圧巻のマスダンス含め、古さを感じさせないモダンな振り付けはとにかくカッコよくて痺れます。ヤンキースを倒すために悪魔と契約して強打者になるというアイデアもまたユニークですよね。

アップルゲイト役は『アパートの鍵貸します』にも出演している個性派俳優レイ・ウォルストン。こちらの役でトニー賞を受賞したそうで、映画版でも同じ役に扮しています。とにかく狡猾でユーモアたっぷりで、時に残酷な悪魔という役柄が彼にぴったり。彼が悪行の限りを尽くした昔を懐かしんで歌う"Those Were the Good Old Days"という曲のシュールさも最高!大好きな俳優さんの1人になりました。
また、ちょっとだけ年齢を感じさせますが(笑)ローラ役のグウェン・ヴァードンのスタイル抜群な体躯を存分に活かしたダンスも見応えバッチリ。なんと彼女はボブ・フォッシーが亡くなるまで連れ添った実生活の奥様だそうです。本作ではなんと圧巻のナンバー"Who's Got the Pain"を夫婦で踊ってくれるのでファンは必見。踊り終わった後に、ジョーが'That was terrific, Fosse!'(すごかったね、フォッシー!)と声をかけて握手するシーンがあるのでお見逃しなく。
それを知ると、なんだか『オール・ザット・ジャズ』に登場する奥さんの役とリアルに重なって複雑...。

ストーリーも面白い、歌も振り付けも良い、そしてテンポも早いと三拍子の傑作。必見です!
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