七色星団

ブレードランナー 2049の七色星団のレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
3.9
前作でのロイ・バッティ一味の悪夢以降、何度も反乱を起こした旧型から改良を重ねて寿命制限は無くし、より従順性を増した改良型レプリカント=ジョーが本作の主人公。

前作から約30年経った2049年、作られし命とはいえ人間と同等、もしくはそれ以上の知能や身体能力を持ち、ほぼ人間と言ってもいいレプリカントにも権利を!みたいな運動がこの時代に起こっている様子はない。むしろ”人間もどき”などと蔑まれ人間様にこき使われ、旧型レプリカントの残党を狩るブレードランナーとして命じられるままに仕事をこなすジョー。しかし、ふとしたキッカケで「俺ってば量産型レプリカントとは違って、何か意味を持たされこの世へ産まれ落ちた、つまり特別な存在ってヤツなんじゃね?」という疑問から始まる自分探しの旅。その果てにあるものはーといった塩梅のストーリー。

ブレードランナーと言えば真っ先に浮かぶのは強烈なビジュアル体験というのがあるけど、流石に2049があの衝撃を超えてくることが無かったのは事実。でもあの世界観を踏み外さないように、あれから30年後にはこうなってるだろうなという地続き感もある丁寧な作りになってるのはグッジョブ!
音楽は現代の巨匠ハンス・ジマーだけどヴァンゲリスに寄せたがために彼の本来の良さが消えてしまった印象。
それと上映時間が2時間40分ってのは長い。フィルムノワールの体をなしていた前作ブレードランナーは物語にも起伏があって、上にも書いたように斬新な映像やデザインされた世界観、音楽も相まって映画の魅力が上映時間の2時間弱にギュッと濃縮されていた。
対して2049はそもそも内省的で落ち着いたトーンの演出で物語は進んでたのだけど、終盤のデッカードが出て来たあたりから急にテンポが悪くなったと感じた。なんならデッカードなしで物語を進めても良かったのにとも。でもこの世界で起こった”奇跡”や”特別な存在”ってキーワード。前作でタイレル社の社長が”特別なレプリカント”と称したレイチェルを本作のメインストーリーに繋げてくるのは上手いアイデアだと思うし、だとするならデッカードの登場も致し方なしといったところかな。

期限付きの命という運命に抗うレプリカントの怒りや悲しみを通して”人間とは?””命とは?”を描いていた前作から引き続きテーマに一貫性を持たせつつ、レプリカントや今回新たに登場するAIホログラムのような管理下にある存在であっても、その制限の中で何か出来ることあんじゃねーの?と。
そして自分を縛るものから自身を解放し、能動的に道を切り開こうと足掻く姿から人間性への目覚めへと繋げるなど、ちゃんと続編としてアップデートされてるあたり凄く良く出来てると思った。

前作で印象的なスコアだった♫Tears in the Rain が、本作でも流れるならココ!という場面で流れた。人間もレプリカントも同様に尊いものは同じなのだと気付くに至った前作のロイ・バッティ。人間であるとはどういうことなのか?過去の記憶とか器の問題ではなく、未来に向かって何をするか?他を思いやり、その気持ちを相手に示すことが出来るかどうか?そこに気が付き行動を起こしたジョー。
苦しい旅路の果てにまさにアップデートがなされた二人の姿が僕的にシンクロしたシーンで、ホントに目頭が熱くなったの巻。
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