aya

ブレードランナー 2049のayaのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.3
哀しいSFでした。

我々とは何者なのか。
我々はどこから来て、どこへ行くのか。
我々を我々たらしめるものはなにか。
今更言うことでもないですが、品の良い哲学アートフィルムです。この作品を壁に映すだけで、ご自宅でも公民館でも駅のトイレだったとしても即座にアート空間になると思う。
そのくらい作品の芸術的エネルギー値が高いです。資本力…

カラーリング、ライティングで物語特有の世界を徹底的に表現していて、視覚への印象づけが強烈です。構図はあまり好みでなかったけど、それを良し悪しで語ってはいけない気がする。表現と説得力の強度を統合してある感じなので…(何を言ってるか自分でもわからないけど)。

で、それを単にCGで描いて良くできてるなんていうわけではなく、登場人物が観たり触れたりするものの質感や、感じる風や雨や血や肉の感触を表現することで、『ナマモノ感』をくどいくらいに出しています。
そこがすごく良くて、『人間』『愛』『生きること』という、ナマモノありきのテーマをSF的世界の中に溶かしこむことに成功しています。
心理描写もとても丁寧で、皆が孤独でした。

サウンドの方も、ヨハン・ヨハンソンが降りてハンス・ジマーが劇伴を担当していまして(此方方は私の肌には合わないけど作品としては)舌を巻く仕上がりになってます。世界観の割にこぢんまりやっとるなーという印象(物語上の「閉塞感」の表現なのかも)なんですが、その空間的なこぢんまりさをサウンドで拡張している感じがあります。この方法はズルいけど巧いなぁって。

『ブレードランナーの続編』と銘打って撮るくらいなので、狙っていたのはこうだろうし、やりたかったのもそれであるはずなので、ベストを尽くされた一本を美味しく頂くことができるんじゃないでしょうか。

度々眠かったし、喋りすぎじゃないですか?というシーンはありました。いちいち長いです。その反面、えぇそこそんなにアッサリいっちゃう?もっと頂戴よ…みたいなところもあり。

だからこの際、エンターテインメントなんて忘れちまいなよ!と言いたくなります。
もっとディープなものが観たくなる。

たまにはこうやって、お金をかけてでもやりたい放題やったアート作品を観たいよね、って思いました。
aya

aya