1927年、耳が聞こえず学校にも通えない閉塞的な日々に耐えきれず家出をした少女・ローズ。1977年、母を亡くし伯母の家に引き取られるも落雷事故で耳が聞こえなくなってしまった絶望から最後の望みである父親を探す旅に出るベン。
違う時代のまったく繋がりのないように見える二人が時を経て次第に交差していく物語。
1927年のシーンはモノクロのサイレント(無声)映画になっている。
対して1977年は建物や車、人物たちの衣装が彩り豊かだった印象。
主人公が二人とも耳が聞こえないため、音が曇ったり無音の表現が多く、現代でのサイレント映画は斬新(2017年の映画だけど)。
ベンとジェイミーの関係が良い。耳が聞こえないベンに話しかけちゃうジェイミー、聾者相手に慣れていない感じが良かった。
ベンにはジェイミーの声が届かないから、気持ちを直接ぶつけられない。父親の居場所を知っていながらもベンと一緒にいたかったために隠し続けていたことを咎められたときに、震える声で震える手でぐちゃぐちゃの文字で訴えるシーンは泣いた。
それでも喧嘩はしたけれどお金を取られ、耳が聞こえない状態で初めてのNYで優しくしてくれたジェイミーのことをベンは本当に友達だと思ってると思う。
父親との確執、母親からの拒絶…と両親との関係が複雑なローズがウォルター(お兄さん)と仲良しなのはホッとした。二人でふざけ合ってるシーンも可愛くて好き。
ローズのへの字口で終始不機嫌そうな顔は、自身の身のおく環境に対する不満と、言葉を伝えられない諦めなのか、とも感じた。
まったく違う人生を生きている二人が意外なところで交差するという物語は個人的にとても好きで、モノクロとカラーを使い分けることで時代を表現し、音楽がとても良かったのでかなりの高評価ですが、物語は「あれは結局なんだったんだろう…?」と深く語られずに気になる部分もちらほらある。
好きな人と苦手な人が別れるが、時間の無駄は取らせない作品であると思う。