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愛を綴る女のかずシネマのレビュー・感想・評価

愛を綴る女(2016年製作の映画)
3.6
あらすじを読んだだけの段階では、激情に駆られるような情熱的な女性の話かと思っていたが、どちらかと言うと「情熱的な事に憧れる女性の話」だった。
作中の母親の台詞であった通り、夢見がち。
そんな彼女は痛くもあるが、何もない田舎で、窮屈な様子の家庭で、そしてあの美貌で過ごして来た彼女が拗らせて病んでしまうのは仕方がないのかもしれない。

こんなにモロな厄介払いとか、ステレオタイプな昔の見合い結婚でなくとも、別にそれ程好きでもない相手(嫌いという意味ではない)と家庭を築いている人って自分の周りでも結構いる。
単にタイミングが良かったからとか、自分の事よりも家族の誰かを安心させたかったからとか、色々な事を逆算して考慮した中で計算上「結婚すべき時期」に付き合っていた相手だからそのまま結婚したとか。
それが良いとか悪いとかでなく。
そして、それはそれで運命の相手だとは思うし。
よく、女性の愛情は最初が満タンでそれが段々と減っていく、男性は逆で最初が少なくて段々と蓄積されていく…なんて話も聞くが、男女関係なく人によるよなぁと思う。
激的な事なんてなくとも、成り立つ関係も多いよなぁと。そして外からなんて何も分からないよなぁと。
作中の、すうっと流れて行く時間の中で、本当に少しずつ変わる主人公と、不器用にも彼女を愛そうとしている旦那さんを観ていて思った。

マリオン・コティヤールを舐め回す様な感じのカメラワークの場面がまぁまぁある。
「嵐が丘」を見ながらベッドに横になる彼女が綺麗。腰のラインが綺麗に出るからいいよね、あの姿勢。

暗い倉庫?の扉の外だけが明るく、そこにいた母親が去った後に扉の近くへ行き、暗闇の中からマリオン・コティヤールが浮かび上がる。
この場面がとても印象的だった。

オチはちょっと唐突な様に思う。
伏線らしい伏線があまり無かったので、ある意味で今はもう定番なあのオチに持っていって、何とか締めた感じ。
これで納得してくださいよ〜、と言われた感じがする。
そこが少し不満。

ところで、やんわりと断ってやんわりと拒否するってのが全然通じない、だからと言ってあからさまに拒否をすると激昂する…つまり何をやっても結局駄目なタイプ。
こういう手合いにはどう対応するのが正解なんだろうな。。
と、序盤の展開を観ていて思った。
色恋の事だけでなくとも、例えば友人知人の関係にしても、こういうタイプはいる。

ラベンダー畑がイイ雰囲気だった。
海の近くの緑を分け行って建築中の家が映った場面もとても綺麗だった。
このページに表示されているポスターかチラシのデザインも、シンプルながら好きだ。
調和のとれた色みと、水平線と隣の写真の位置が合っているのがイイ。
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