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わたしは、ダニエル・ブレイクのmkのレビュー・感想・評価

4.2
すごく良かった。本作で描かれている社会保障の欠陥は、どこの国でも通ずる話。決して他人事ではない、すごくリアルに感じられる映画。

日本でも着々と進められている行政手続きの完全オンライン化。一見プラスにしか見えないが、デジタル弱者にとっては入り口を遮断されるようなもの。私も、親のオンライン手続を手伝ったり、スマホの使い方を教える機会は多い。日本では、このような状況に対して、高齢者に向けた講習会を開くという構想があるらしいが、日常的にデジタル機器に触れていなければ、すぐに忘れてしまうだろうし、なかなか難しいだろう。

また、ダニエルとケイティは、融通の利かない役所のせいで、受けるべき社会保障をまともに受けられない。「正義を貫く人がホームレスになる」という言葉には、やるせなくて悲しくなった。

しかしその分、本作で登場する市民の隣人への暖かさには胸を打たれる。ダニエルのケイティへの優しさもそうであるし、ダニエルの抗議を応援する人も、パソコン操作を教えてあげる人も、万引きを見逃してあげる人も。

また、生理の貧困について言及されていたこともすごく良かった。生理用品って、生理がある人にとってトイレットペーパーと同じレベルで生活必需品であるのに、支援として見落とされがちで、無料で配布してる所はほとんどない。月に1人500〜1000円かかるので、この支出は大きい。日本では、都立高校で無料配布が始まっているみたいだけど、この流れがどんどん大きくなって欲しい。

とても考えさせられるし、ケン・ローチ監督の怒りもひしひしと伝わってくる映画だった。
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