chiakihayashi

わたしは、ダニエル・ブレイクのchiakihayashiのレビュー・感想・評価

4.2
 ITと官僚主義は当然相性がいい。そこに〝イェルサレムのアイヒマン〟化−−−−彼らが仕えるのはファシズムではなくネオリベラリズムだが−−−−が加わればテッパンのシステムになる。しかも福祉制度の受給者に対する制裁措置が設けられると、行政当局の職員たちは否応なく抑圧機械になる・・・・・・。

 そんなシステムから自らの尊厳を守るためには何が大切にされねばならないか。この映画のすべてがそれを伝えている。

 実直さ。正直であること。ユーモア。反骨精神。そして、なによりも人々の連帯意識。街中でたまさかすれ違う他者に自然に素直に手助けすることから、危機にあるときに自分に差し伸べられた手をとる勇気(他者への信頼に賭けることだから)まで、濃淡の差はあれどさまざまな連帯のあり方が見てとれる。

 80歳になる名匠ケン・ローチの眼差しの優しさ、深さ。その奥でなお燃えている確固とした信念とそれを裏打ちする思想性。円熟とはこういうことか。
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