近藤真弥

わたしは、ダニエル・ブレイクの近藤真弥のレビュー・感想・評価

4.5
長い間ワーキング・クラスを見つめてきたケン・ローチだからこそ作れる映画。国や制度が殺しにきてる現状をしっかり描いてるし、それに対する批判も盛り込んでいる。さらに、その批判をセリフで言わせるのではなく、ひとつの光景で表現してるのが素晴らしい。これは丁寧な会話劇や演出という土台がちゃんとしてるからこそ可能であり、ここに僕は映画的な面白さを見いだす。

こうした作品になったのは、ケン・ローチの謙虚な姿勢が関係していると思う。彼はたびたび、映画は政治運動じゃないと言ってるんだけど、それは彼にとって映画は、無視されがちな声を表現する手段だから。こういう思い上がらない人だからこそ、彼は本質を見つめることができる。巨匠なんて言われたりもするけど、彼は常に地べたから世界を見つめている。
近藤真弥

近藤真弥