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わたしは、ダニエル・ブレイクのminyamooomのレビュー・感想・評価

4.0
はじめてのケンローチ作品。

ダニエルブレイクさんの生涯、的な穏やかな話かなと思ってたんだけど、そこはさすがパルムドール作品。イギリスの福祉制度と貧困の実情を淡々と切り取った、かなり重ための作品でした。

愛する妻に先立たれ身寄りのない59歳のダニエル・ブレイクと、幼い2人の子供を抱えたシングルマザーのケイティが、援助を求め複雑な福祉制度と理不尽な職員による対応に翻弄されながらも、支え合って懸命に生きようとする物語。

日本でも生活保護の不正受給が問題になっているように、以前テレビの番組でイギリスの生活保護について特集しているのを見たことがある。イギリスは生活保護がかなり手厚いようで、国民の17人に1人が受給しているとのこと。物価の高いイギリスで一生懸命働いて高い税金を納めている人たちからすれば、自分が働いたお金で生活保護費が支給されているかと思うと、なんだか微妙な気持ちになるよね。
ダニエルブレイクの年齢は59歳設定。年金がもらえるのは65歳からだから、一切の収入がなくなるのは困るところだろうと思う。長年大工をやってきて、パソコンは触れないけど家は建てることができる。心臓を悪くしていて、大工仕事はドクターストップがかかっている。
60歳前後の人が、新しく仕事を見つけることは大変なことだろうと思う。できる仕事だって限られてくるだろうし、雇う側だって若い人のほうがいいよね。ただ、子供もおらず贅沢な暮らしているようにも見えなかった夫婦の間に、貯蓄は一切なかったのかな…とも思うけど。

最近はレストランでもタブレット注文のところがあったり、スーパーのお会計もセルフレジだったりするよね。うちのお母さんがTSUTAYAに行ったらセルフレジしかなくて、困ってても店員さんも教えてくれなくて、誰も助けてくれなくてもう借りるのやめた、と言っていたのを思い出した。
スマホに変えたり、LINEをインストールしたり、ネット通販したりオンラインの請求をしたり。いろんなことがとても便利になっている一方で、困っている人たちもいるんだろうなと痛感する。
子供がいれば、助けてくれるだろうと思う。でも子供も他に頼れる親戚もいないとき、一体誰が助けてくれるんだろう。

ダニエルは隣人と仲良くやっているし、街では仕事仲間と軽口を叩いたりもする。聞けば助けてくれる市民もいるし、なんていうのかな、住むのに、危険な場所ではもちろんない。

ただ、この〝お金がない〟て、本当に辛いことだなと思う。

それだけで、人間は尊厳をも失うのか。困った時は、助け合うのが人というものではないのか。福祉とは、保障とは、一体なんなんだろう。

政府が悪者なわけでもなくて、国民が全部正しいわけでもない。でも、ダニエルブレイクのような人がたくさんいるのも事実なんだと思う。
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