Rei

わたしは、ダニエル・ブレイクのReiのレビュー・感想・評価

3.7
Bedroom tax(寝室税)という聞き慣れない税。
全ての人に課せられることになった税制なのかなと思っていたら、なんと生活保護受給者対象の税金だそう。
生活保護受けといて寝室がひとりひとりにあるような生活は贅沢だ、というわけですね。また個々の事情を聞き届けて貰うには複雑なハードルが。
高齢化が進むイギリスで不正受給も社会問題となり、その対策として絞り出した知恵なのだそうですが、財政難に苦しむ政府の対策は何も生活保護対象者だけではないのでしょう。役所の人間も役所を訪れる人達もみんな紳士淑女ではいられないわけで、ギスギスしてます。
バイオレンスなピエロだろうが、可愛いバニーちゃんだろうが、人々の不満と、弱者が希望の火を消さないよう努めても、静かに追い詰められて行く姿は同様のものを感じる。

身を削り子供を懸命に育てるシングルマザーのフードバンクのシーンは胸を締め付けられる。
真面目に勤め上げ、自身も心臓を患う身でありながら弱い人間に手を貸し、隣人達のお行儀を正そうと大声で叱咤していた毅然とした紳士が、理不尽に耐えながら努力するも四方八方を塞がれ日に日に声を無くし、助けを求める気力さえ失って行くさまが切ない。
困窮は表面上はわからないものだということを思い知らされる。

子供の頃は、なぜいつまでたっても世界平和が訪れないのか、どこかのお金持ちが独占をやめれば善良な人は救われて平和が必ず訪れるんじゃないかと思っていた。
みんながせーので幸せになるってそんな単純な事じゃないんだよな。
そもそも誰かが犠牲になるとか、誰かのせいにするのも矛盾してる、、、
幸福なんて壮大なテーマを突きつけてくるケン・ローチ監督作品、他もモヤモヤするのかなー。
観たいような、観たくないような、、、
私も見て見ぬ振りしてる人間の一人なんだ。
Rei

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