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エリザのためにのhiroseのレビュー・感想・評価

エリザのために(2016年製作の映画)
4.0
「娘を過保護する父親」の物語だけだと思い込むと見誤る作品じゃないだろうか

というより、親バカの話だと思って見た人は、謎の演出が多くて意味不明だと感じるのでは?

自分も最初はそう見始めて困惑したけど、途中で「社会の不正」と「不誠実」に対する作品なのだと考え直すと合点がいくところが多くなって、凄い演出やってるな、と

かつては国を正しい方向へ動かそうとして、娘には「誠実でいなさい」と教えていた父が、今では愛人と逢瀬を繰り返し、自分の娘のために警察、教師などと歪につながっていく。

愛人の息子が公園で石を投げたときのセリフや、ラストの娘のセリフにドキッとさせられた。

「もっと分かりやすく作れ」って言う人もいるだろうけど、不正や社会の空気感は地の底を這う冷気のようなもので、声高に表現すると本質から離れてしまうのではないかと、この作品を観て考えさせられた。

もちろん娘を思いすぎる父親を描く面もあるし良さの一つだけど、邦画を観るように人物の感情だけを追うだけでは見えない面白さもあるんじゃないだろうか?
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