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お嬢さんのSnLのレビュー・感想・評価

お嬢さん(2016年製作の映画)
4.1
深窓の令嬢の妖しげな魅力を、韓国映画らしいエログロ描写でレバレッジしている映画と聞き及び、バイオレンスを期待して観に行ったが、普通にサスペンスとして楽しんだ。

スッキの目線で語られる第1部で「おや?」と思わせる場面が散りばめられ、お嬢さんの目線の第2部で次々に回収していくさまも鮮やか。
第3部の最後まで、お嬢さんと藤原伯爵、そしてスッキの3人のうちどのコンビが目論見を遂げるのかわからず、集中して楽しめる。

バイオレンスな要素ももちろん見逃せないのだけど、ありとあらゆる道具、変態を駆使したこの映画のバイオレンスシーンにはどこか笑ってしまう。子供時代のお嬢さんに思いっきり隠語を言わせたり、朗読会と称して変態紳士たちの前でお嬢さんが木人形を宙に舞わせたり。

そういう悪趣味を露悪的に笑い飛ばす姿勢はエログロシーン以外にも通底してて、日本人相手になした財で建てられた和洋折衷の屋敷を映す大げさなカットや、藤原伯爵が抑揚のない片言の日本語でお嬢さんに吐くくさいセリフが戯画的に繰り返される。日本統治下にあった朝鮮で「日本人」になろうとするブルジョワの欺瞞、そして朝鮮人を「日本人」にしようとする帝国日本の欺瞞を笑い飛ばしている、と観ることもできるかもしれない。

コメディとはいかないまでもシュールな笑い、サスペンス、エログロ、そして最後はお嬢さんと侍女の純愛物というようにくるくると表情を変える雑多な脚本に独特な魅力がある。

一点気になったのは下関へと向かう船の中での「本日は当船をご利用いただきまして、まことにありがとうございました」というアナウンス。すごく現代的に聞こえるけど、当時からあんなアナウンスがされていたのだろうか?
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