りょう

セールスマンのりょうのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
4.2
 この作品の物語は、主人公の夫婦が舞台に出演している「セールスマンの死」とリンクしているようですが、その原作のあらすじすらわからないので、少し残念でした。
 ただ、人間関係の微妙なズレが加速度的に拡大し、最後にほぼ破綻して終演を迎えるという展開は、アスガー・ファルハディ監督ならではの秀逸な演出です。4年ぶりくらいで2回目を観ましたが、やっぱり面白いです。
 欧米の作品と比較すると映像が荒っぽく感じられますが、かなり緻密な脚本でなければ、この展開に違和感なく没入させられることもないはずです。イランという独特の文化が背景にあるので、登場人物の心情を完全に理解できていないかもしれません。ただ、妻がこんな境遇にあって、夫婦の言動がことごとく対照的で、それが最後まで鮮明です。誰のためのものか曖昧な夫のプライドが悲劇めいた結末を招きますが、そのスッキリしない印象がこの作品の真骨頂だし、そこが賛否の要因でしょう。個人的には大好きですが…。
 それにしても、冒頭でアパートが破壊されそうになる理不尽なシーンが物語の背景でしかないって…、やっぱりイランの国内事情は理解できません。
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