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セールスマンのAKのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
4.0
イラン人留学生の友人に薦められて観た。アスガー・ファルハディ監督作品は初鑑賞。ただ、イラン文化は友人から聞いて知っていたし、人文学徒の端くれとして当然アーサー・ミラー『セールスマンの死』は読んでいた。

日常を壊す揺れのオープニングシーン(日本に暮らすものならばそれは前触れなくやってくることを皆知っている)から、最後の劇中劇『セールスマンの死』の”その後”まで、ひたすら濃密で緊張感あるシーンが続く。

もうすでに多くの人が指摘していることだが、本作は重要な「あるシーン」を一切映さない。それがすでにして政治的告発になっている。

ミラーの戯曲『セールスマンの死』は、最後にセールスマンが自死を選ぶ。それは近代における父権性の死の比喩となっていた。では、本作における「セールスマン」とは何を意味していたのか?

ただひたすらに考えさせる。傑作。
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