「カサブランカ」（1942）のマイケル・カーティス監督による社会派ドラマ。ストライキを起こした炭鉱夫が会社の自警団に殺害された実話を元に映画化。主演は「仮面の米国」（1932）のポール・ムニ。助演に「麦秋」（1934）のカレン・モーリイ。

ペンシルベニア州の炭鉱町。移民労働者のジョー（ポール・ムニ）はいつか農場を持つことを夢見て懸命に働いていた。しかし炭鉱町の暮らしにうんざりしていた妻アンナが家出してしまう。ショックのあまり深酒をしたジョーは、親友マイクが率いる労働組合への誘いを受け、全く無関心だったのに安請け合いする。ところが、町で起こった暴動騒ぎの中、会社が雇った自警団の暴力によりマイクが死亡。怒ったジョーは大量のダイナマイトと共に鉱山に閉じこもりストライキを起こす。。。

サミュエル・フラー監督が「仮面の米国」と共に最も好きな映画として挙げた一本。当時のハリウッドでは珍しい労働者運動の勝利を描く映画で、いくつかの州では社会的紛争を先導するとして上映禁止になっている。

個人的に本作のような革命的な映画は好物な上、炭鉱の映像美術、シナリオ、演技とも完成度が高くかなり楽しめた。自警団の暴力によって庶民たちが鎮圧されていく様には「いちご白書」（1970）を連想。アメリカン・ニューシネマであれば抵抗する主人公は敗北していくところだが、本作はエイゼンシュタイン監督の映画のように労働者が勝利する。（ただし審判を下したのはワシントンの政府中枢であり革命ということではない）。

個的な爆弾闘争をやり遂げる構図は若松プロの先駆とも言え、上映禁止“上等”の気合が伝わってくる熱のこもった一本。