アベ二ティKazumaAbe

ヤコペッティの大残酷のアベ二ティKazumaAbeのレビュー・感想・評価

ヤコペッティの大残酷(1974年製作の映画)
3.9
ウェストファリアで暮らしていた純朴な青年カンディードは、城主の娘クネゴンダ姫と恋をする。ある日城は攻撃され、クネゴンダ姫と生き別れたカンディードは彼女を求めて世界中を放浪する。まず映画全編を占領するシュールなギャグセンスに面食らう。城を攻めてくるのが近代兵器だったり、中世の雰囲気の世界にレコード、ギターみたいな製品が突然出現する。かと思ったら変な宗教裁判の場面で主人公が全裸に剥かれ、海外に渡ればいきなり近代文明と遭遇して車に乗り込んだりする。端的に言って意味不明である。本気で撮っているなら完全に気が狂っている。

全世界の風俗を収めたドキュメンタリーを通じ、「ハイハイ黒人も白人も、人間ならみんな残酷でバカ、優劣つけたとこで意味ないね!」とのメッセージを貫いてきたヤコペッティであるから言わんとしていることを多少は汲める余地があれど、半裸の美女軍団が一斉射撃するシーンとかの印象がバリ強すぎてなかなか入ってこない笑。冒頭からいきなり乳を見せにかかる所からも相当に病んだ監督の人格が伺える。

してこの攻撃的な映像の濁流が不快か?と言われればそうでもなく(登場するのも美男美女ばかりだし)、なんだかところどころ深いものを感じさせたりしてズルい。単なるエロバカ映画に終わらせないほどには寓意的、人を惹く要素の詰め込み方は限りなくPV的。大残酷!と邦題にあっても全く残酷でなかったし、原作『カンディード、あるいは楽天主義説』も気になったので読んでみたい。