えいがのおと

闇金ウシジマくん ザ・ファイナルのえいがのおとのレビュー・感想・評価

3.9
良い意味で、シリーズをぶち壊しながらも、まとめた、シリーズの最終作

原作漫画の設定、ストーリーを大切にしながらも、コミカルさを織り交ぜてきた、ウシジマシリーズの完結編。
このシリーズの素晴らしかったのは、やはり原作リスペクトによる、コスプレでない完全再現性だ。
主演の山田孝之は、多くのインタビューで答えているが、普段と異なる役作りで臨み、誰もが納得するウシジマ像を作り上げてきた。また、個性豊かな債務者たちも、見事なキャスティングと、その演技力により、作品を彩ってきていた。
そんな再現性は、もちろん今作にも該当する。
重要なエピソードである、ウシジマ達の回想シーンを務める、 若き役者達がそれだ。
演技力も含め、一歩間違えると、B級映画以下のクオリティになりかねないところだが、見事なキャスティングと、熱演であった。
その他、メインメンバーの鰐戸三兄弟を始め、誠愛の家のメンバー、特に、竹本の存在感は素晴らしかった。
一方、そんな再現性的なものを唯一破壊するものがある。
それが、ウシジマである。
シリーズにおいて最もと言えるほど、緻密に描かれていた彼の人物像が揺らいでくるのが、本作である。
特に物語後半からラストシーンにかけての、彼の表情、言動は新たな一面を作り上げ、物語に奥行きを作り上げた。
そうした意味で、シリーズからの前向きな脱却であり、そして最終作となる所以がここにあった。
また、作品の後半でお好み焼きを食べるシーンでの江崎のセリフも素晴らしい。
原作漫画では主に債務者だったが、映像化シリーズではカウカウファイナンスのメンバーの食事シーンが多く描かれていた。
オムライスのケチャップや、ビタミンが体内で生成できるなど、印象的な場面を作り出したことはもちろんだが、これらが意図的に描かれていたということに気がつかされる。
お金をメインで描いていたかに感じるが、その先には、やはり食べていくという生活があり、そのためのお金であるという側面、そんなものが、細やかに見えてくるのではないだろうか。
腹を満たして余ったそのお金を、誰の何のために使うのか、そんなことを、少し偽善的になってしまうかもしれないが、考えたくなる作品だった。