おるふぇ

ブンミおじさんの森のおるふぇのレビュー・感想・評価

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)
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北千住ブルースタジオにて視聴。のっけから耳もとで聞くような木々や虫の騒々しいざわめき、森の深々とした闇が、文明に毒されていない映像世界へとトリップさせてくれる。精霊や死者と当然のように共存し、その境を曖昧に生きることのできるブンミ。ナマズと女王との生殖シーンなど、エロティックかつ神話的な世界観、そして音響、アンビエントのような地鳴りを劇場で体感しているうちに、この肩に乗った現代社会という荷が徐々に取り除かれ、深い洞窟に紛れ込んだように胎内回帰の感覚さえ誘う。

けれども、それもやがて失われる感覚であることをも、映画は劇中で示唆する。その感覚の持ち主たちが「過去の人」としてスクリーンの中でしか生存できなくなるであろうこと、故にその世界を五感で再現できるよう、失われないようにする、その執心の実現は、フィルムでしか出来ないことだ。「映画」という形で見(まみ)えることが出来て本当によかった。