戦争映画というよりは、信仰心にまつわる作品だと感じた。主人公・デズモンドの「信じていることを信じてるだけ」というセリフからもわかるように、正しさを貫くことの素晴らしさが本作の主題でしょう。このあたりはメル・ギブソンのパーソナリティーが表れている。
そのうえで言えば、本作には惹かれませんでした。信じる“正しさ”について逡巡する場面がほとんどなく、“正しさ”にたどり着くまでの背景がハッキリしない。思想や価値観にシンパシーを抱けなくても、「こういうことがあってこうした考えにたどり着いたんだな」と理解することはできるのだけど、その理解が本作ではできない。もっと言えば、デズモンドの信仰心は“そう教えられたから”という稚拙な思考と一緒じゃないかと。
自分を疑えないメル・ギブソンはある意味強いなあと思いつつ、同時に愚かだなとも思う。