RyojiOmosako

ハクソー・リッジのRyojiOmosakoのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.4
年初めから早く観たいと待ち焦がれた作品です。思った以上に良品です。
前半と後半で別ジャンルの作品になってます。
前半は戦時映画で、後半が戦場映画という感じにね。
肝は父親の復員軍人のPTSDでしょう。
墓地で長男デズモンドに体験し親友を失った先の第一次大戦の悲惨さを訥々と語る姿に涙しました。
武器を拒否する契機になった両親の喧嘩を目の当たりにしての行動に凄味と父親の感情に痛みを覚えました。
殺人をする軍隊に進んで志願入隊したはずなのに、武器を拒否し訓練も簡単な基礎訓練のみで、周りの兵や上官からの苛め誹謗中傷に耐えて、父親の直訴等で武器不所持の衛生兵として出征を許可されるのは、我が国の軍隊や自衛隊では考えられないでしょう。

6回上陸し、6回撃退された《前田高地》編に突入すると、『二百三高地』か『プライベート・ライアン』のような死屍累々の現状を観客は瞠目することに…
撤退したのにも拘らず、高地に残って救助活動をするだけでなく、敵の日本兵もハクソーリッジから降ろしたり、日本軍の地下塹壕に入って負傷日本兵の手当をするイエス様のような活躍をする彼は実在するのだろうかと懐疑的になりそうでした。

最後に事実と違う部分も幾つかあったので付記します。
奥様と初対面する場所が、病院ではなく教会であること。
武器を拒否する契機になった両親の夫婦喧嘩は、実際には父親と叔父の兄弟喧嘩だったことです。
前半の幼少時の兄弟喧嘩にダブらせてありますね。

追伸
本作の宣伝に《沖縄戦》や《前田高地》という文字を使わなかったのは、配給会社の意図した思惑があったそうです。
但し、沖縄県と前田高地を有する浦添市は許可のもと別の宣伝で本作を大々的にアピールしてるそうで、浦添市役所のHPで国内外から大挙して前田高地詣でが盛んになってるみたいです。
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