柚菜

ハクソー・リッジの柚菜のレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.8
鳥肌がたった。涙がでた。笑った。ほっこりした。でも、最後はこんな戦場が二度と現れない世界を願うだけになってた。

どこにでもいる、ごく普通の生活を送ってた人同士をこんな凄惨な戦場に狩りだして殺し合いをさせなきゃいけない時代って何?グチャグチャの肉片になって死ななきゃならなかったこの人たちの人生とはなんだったのか??

ホントにこれは観れて良かった。映画館で観るべき作品。アカデミー賞とるだけの迫力の音もさすが。

前半はちょっとヲタクっぽい?いかにも慣れてない田舎の男の人ととびきりの美人とのちょっとしたラブストーリー。ごく普通の人、どこにでもいるようなアメリカ人って印象で。その中に彼の信念を作り出す家族とのエピソードがうまく描かれてて。

軍に志願してからはやっぱり戦争しに行くのに銃を持てない信念を誰も理解出来なくて、浮いて、嫌がらせを受けて。刑務所送りにされそうになって。でも最終的に憲法によって守られてる権利として認められ戦場へ。
(戦争中という緊迫した情勢の中でも信仰の自由を認めて憲法を遵守するあたりさすがアメリカだなと。今の勝手に憲法解釈変えてしまうどこかの首相とは大違い)

そして舞台は沖縄のハクソーリッジ(前田高地)へ。いかにも外人が好きそうな急な切腹シーンや、そもそもアメリカ兵が何度も後退しては登ってくる縄梯子を切って登れないようにしない日本兵の無能具合に?と思う点はありつつ、ただの悪ではない、日本人からみてても違和感のない戦闘描写。

前が煙って見えない。不気味な静けさの中、敵がいつどこから襲ってくるかわからない状況で前に前に進まなくてはいけない残酷さ。一瞬で吹き飛ぶ手足。ただでさえ暑い沖縄で火炎放射を浴びて死ななきゃいけない兵士たち。うじやネズミにグチャグチャになって死んでもなお食べ続けられる無念さ。人が人でなくなる場所。そんな場所で一人残って貪欲にあともう一人あともう一人と負傷者を助け出す主人公。

こんな場所に父を。恋人を。夫を。息子を。大切な誰かを送り込まなきゃいけなかった時代の人を想うと涙が出てきて。もうゼッタイそんな世の中にしてはいけないってつくづく思った。
柚菜

柚菜