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ハクソー・リッジのsnowのネタバレレビュー・内容・結末

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

前半のDesmond Dossに突き付けられる、銃を持って人を殺すか、もしくは戦わないか。志願の理由のDossの台詞にも出てくるけど、当時のアメリカは真珠湾攻撃に酷くショックを受けていたことが読み取れる。9.11のように。
統一した規律と規格が求められる軍隊。そして銃を持たないための軍法裁判で「憲法で規定されている」というのを観て、ああこれは監督自身のことなのだろうなあ、と。
戦時中にも拘わらずアメリカ本土があまりに平和で。しかも銃を持たない自由も認められる。この差は何だろうと思ったら。

戦場での残虐さに呆然とした。
その目的を思えば、手足はちぎれ、内臓は食み出し、頭が裂けた人間があたり一面に転がり、放置された遺体をネズミが食い荒らしているのが当然で、その現実を目の当たりにする兵士がPTSDになるのも無理はないのだと。
戦争の悲惨な現状がテレビで流れることがまずないことを思うと、Mel Gibson監督は肉体損傷の描写に力がこもっていて手抜きがない上に、過去では許されないのではと思うほど容赦ない。同時に日本人の描き方が酷いなあ、という思いも。

Dossは一見細身に見えるけど、Dorothyとのシーンでは逞しい上半身が映る。だからこそ後半で不死身な活躍ができるのだと、その伏線だったと観終えた後に気が付く。
衛生兵とは、怪我人を救ってもその兵士は再び戦場に駆り出されるわけで終わりがないものだと感じていたけれども、その役割は「死を防ぐ応急措置」をするのだと。治療できる場所に運ぶ前に死んでしまわないように。作品の中でも負傷した兵士がDossの顔や声を聞いて安堵していたのを観ると、兵士の士気高揚や気休めとして重要な役割なのだと。
自国にさえ理解されないその思いを携え、聖書の愛を説きながら戦場に向かう気持ちは、気持ちの折り合いは、という思いを馳せながらの鑑賞。

原題「Hacksaw Ridge」の意味は、弓のこで真っ二つに切ったかのように切り立つ断崖。
Hacksaw = 弓のこ
Ridge = 崖
沖縄県浦添市にあった日本軍陣地「前田高地」に対する米側の呼び名。浦添市では住民もこの戦闘に巻き込まれ、当時の浦添村民の44.6%が亡くなったと。*浦添市ホームページ http://www.city.urasoe.lg.jp/docs/2017052900033/

この作品は米軍と日本軍による死闘の中で、衛生兵Desmond Dossという実在する人物の「人を殺さないという信条」と「米軍撤退後の奇跡的な活躍」に焦点が当てられ、犠牲になった沖縄県民がいっさい登場していないのを観るとこういった背景は知っておく必要があると思いながら。
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