鹿江光

シンクロニシティの鹿江光のレビュー・感想・評価

シンクロニシティ(2015年製作の映画)
3.4
≪68点≫:偶然は正体を隠した神の業。
この作品の感想を聞かれたら、おそらく8割がこう言うだろう。「ありのまま今起こったことを話すぜ!」――まさにポルナレフ状態。サイエンスミステリーというべきか、SFノワールというべきか、とにかく意味不明の連続で時間が過ぎていく。
要素はお馴染み、みんな大好きな「タイムマシン」と「パラレルワールド」というもの。そこに謎の物質やワームホール理論が絡んで、さらには色恋沙汰も……。もう訳わからん!一体主人公は今どこへ向かって、何の目的で動いているのか、そんな基本的な情報すらも見失ってしまうシナリオなのである。
ただ世界観の創り込みは徹底していて、どこか退廃的な雰囲気が終始纏わりついてくる。『ブレードランナー』に代表されるような、虚しさに襲われる音楽の使い方も特徴的。正直、起承転結が解らなくても、雰囲気だけで結構真剣に観れてしまう。
そんなこんなでラストシーンを迎えても、やっぱり何が行われていたのかがモヤっとしたまま終わる。目の前で起きていることは分かるが、その中にあるメッセージが掴みきれない。それでも観終わった後は、「何かすごく骨太なものを観たぞ」という気分になれる。
SF作品は適度に「訳わからない」ほうが、後味が残って面白いのかもしれない。数週間経ってじわじわと来るような、そんな不思議な魅力を感じた作品だった。
おそらくだが、この作品は面白い。ただ確証は得られない。
鹿江光

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