Asino

マイ・ビューティフル・ランドレットのAsinoのレビュー・感想・評価

4.2
ハンスジマーのドキュメンタリー見てたら、この映画も彼の(ごくごく初期の)作品の一つと知って、あの泡がはじけるみたいな音!と妙な納得感があった。

劇場公開時に見たクチですが、2016年に見直した時の感想貼っておこ。
(今ならU-Nextにある)
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これは第1次(笑)英国俳優ブームのただなかで公開された映画でして、「眺めのいい部屋」から数か月後のことでした。
私はどちらも当時劇場で見たわけですが、ほぼ同じ時期に撮られてるのに、ダニエル・デイ・ルイスが演じてる役の振れ幅のすごさがほんと呆れる。
「眺めの~」に比べて見たことある人少ないと思うのですが、100倍色っぽい役ですしぜひ見てほしい。
めっちゃ訛ってる南ロンドンの無職のゲイの若者なんだけど、行き詰って、ある意味諦め、でも諦めきれずにもいる複雑さがちょっとした目線ひとつに表れていてほんとすごいので。
まあ、ダニエル・デイ=ルイスの演技力をいまさら云々語る必要はないんだろうと思うわけですが、ほんとにもう。
その手のシーンもありますが、私の好みとしては傷の手当てされてるところがたまらんてなりました(そこは別に語らなくてもいい)

そんなことはともかく、これも「サッチャー時代」の英国を描いた映画なのだよなぁと改めて感慨深く見ていたのでした。初見のころは、なんだか暗く、ちっとも(当時高校生だった私がぼんやりもっていた)”あこがれの英国”っぽさがなく(苦笑)、すっきりした落ちがあるわけでもないのでもやもやして帰ってきた記憶がありますが、まあちょっと高校生には無理な相談でした。

公開が'87年なのでまだサッチャー政権下で撮られていたわけですね。「プライド」みたいな前向きさより、行き詰まり感ばかり感じるのはそのせいもあるのかも。

移民排斥をしてた若者たちのどん詰まり感と、パキスタン移民の一族たちのギラギラした野心の対照的なことの皮肉。
知識人として尊敬されていたはずなのに行き場がなくてアル中になる父、移民の成りあがり男の愛人しか道がない女。
ちっとも美しくないロンドンの縮図感がすごくて、80年代を実感することになる映画です。
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