リヒト

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリーのリヒトのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

興奮しながら記憶をもとに勢いで書いておりますので、誤った情報があったらすみません。

感想ですが、
ディズニーの手に渡った後のスター・ウォーズの映画の中で、群を抜けて良かったです。

地上波で途中からの初見でも楽しめる、オリジナル三部作のような楽しさがありました。

それは"スター・ウォーズとして"はもちろん、一つの映画としてもまたこの作品は良く出来ていると思いました。

支配された生活からの脱却が当初の目標だったハン。世界には帝国の支配により暗雲漂う中、彼の別れと旅立ちが始まるわけですが、この物語を悲壮感なくスタイリッシュに描くことはとても難しいのではないかと思います。

トルーパーが奴隷に酷いことをしているところを映して、帝国の酷さをアピールすることは出来ますが、この作品ではそういった直接的で説明的な描写に逃げず、人物のテンションと、印象に残る出来事で表す姿勢に終始しています。それはオリジナル三部作にも共通しています。好感が持てます。
ハン・ソロという人間を描く上では、重た過ぎる空気感は弊害になったでしょうし、とりわけスター・ウォーズがいわゆる形で戦争映画的になってしまっては、従来の作品と地続きに見えません。
だからと言ってこの作品が明朗快活なジェットコースタームービーにとどまっているわけではありません。主人公を軸として見る様々な人物との関係性が、ドラマに深みを持たせています。

伝説的な作品に後付けすることはとても難しいことでしょう。それはSWについても
多少の無理をしながら世界観を拡充し続け、今では正史扱いされなくなってしまった数々の作品群や、もとよりあったテンプレートに沿ったフォースの覚醒が物語っています。最後のジェダイはテンプレートの打破に突き進んだ結果、映画として破綻しました。

『ハン・ソロ』は、魅力的で血が通った新たなキャラクターと、芯が通ったドラマにより、上記のジレンマを払拭しています。

愛する人と仕事をしているベケットは序盤、キーラと別れてしまったハンにとっては憧れ頼れる人物ですが、彼は誰も信用していない。エンフィス・ネストに心動かされたハン達の元を去っていくその姿は、新たなる希望で反乱軍を去るハンと重なります。アウトローとしてベケットとは相棒でいられないことを理解し、銃を抜いたハンは正しくグリードを撃ち抜いたその人といった感じです。

しかし一方でハン・ソロの魅力はアウトローであることや、ノリだけでなく、根が善人だということも忘れてはいけません。裏切ったベケットとは違い、ハンはデス・スターに現れました。それを語る上でキーラという存在は大きい。幼馴染の元カノが「いい人」と言えば、その男はいい人です。鼻っ柱の強いレイアに惹かれたハンの元カノとしても納得。ハンと生き別れた彼女の3年間を多く語らないことは、悲痛な想像を掻き立てられますし、幼い頃の異性の友達がいつの間にか大人になっている感覚を思い出させられました。しかしそれに動じないのがハンの凄いところ。一途です。

L3は、かなり痛快なキャラクターでした。今、資本の元で映画を創ろうとすると、ジェンダーに関して声高にしのごの言う人物は必ずいます。ことディズニーにおいては確実で、『ブラックパンサー』の親衛隊やSWにもファズマという女性キャラが生まれました。
これをドロイドに置き換えることで見事に皮肉を含ませ、逆手に取ったのが彼女でしょう。彼女の権利主張は鬱陶しいですが滑稽で、キーラとの会話もあり、「いるいるこういう人」というのをドロイドでやるというエキセントリックさで、この映画に嵐のようなユーモアをもたらしています。「やりたいこと見つけた!」「この仕事受けてよかった!」とはしゃいでしまうのも納得ですし、騒動を起こすことは画を活性化させ、帝国、TIEファイターの突然の登場にも一躍買いました。予想より早くに退場してしまうことは本当に残念でしたが、ランドがファルコンと一体化したと宣言したことで前向きに捉えられました。

ヴォスは初登場時に感情的になると知事も殺してしまうというイメージを引っさげ登場しましたが、他の犯罪組織との関係性を気にするなど、実写ではハット以外犯罪組織が描かれてこなかったこともあり、今までいないタイプの悪役でした。さらに彼がいることで生まれた交渉のシーンは、ハンの、ハッタリの効いた話術のセンスを描くことに一役買っています。ベケットとチューバッカが去った後の決闘は始まり方から最高でしたね。視聴者が人物の思考を理解して追いついていく感じはたまらないですな。

エンフィス・ネストはいいキャラしてましたね。多くの宝のうちひとつをハンに渡すところが実力者という感じがしますし、彼女はなんと、スウープ・バイクに乗っていました!

そう、ファルコンの銃座の画面に始まる、ファンをニヤリとさせる要素が、作品を邪魔しないようにさり気なく機能していたのもよかったです。

例えば制御ボルトはドロイドの権利を主張するL3に絡ませるにはうってつけで、これが反乱に繋がりましたし、

テラス・カシは、もとよりゲームのタイトルにもなった格闘術で、モールはこの達人です。ドライデン仕込みとキーラは言っていましたが、つまりそういうことでしょう。

さらに、オーラ・シング。ファンには広く知られる賞金稼ぎですが、描写せずとも殺したことにしてもいい程度のビッグネームです。新キャラ、ベケットの実力の証左にするとはかなり上手い使い方だと思いました。

少し逸れてしまいましたが、この映画のスタッフに愛を持って生み出された人物たちや、取り入れられた要素が、作品を引き立たせていたのは間違いありません。

上映時間が長い作品ですが、それを感じさせませんでした。

もちろん、ハン・ソロの知られざる過去を見られるだけで興奮するのですが、それに頼っているだけではないのが凄いところです。
どんどんハンはハンになっていきましたし、ランドはランドでしたし。

最後に、ファルコンが最初に飛び立つところがやけにあっさりしているなと思っていたら、あの劇伴でそう見せてくるかと、かなりキましたねあれは。

とてもよかったです!!!エピソード9とかより『ハン・ソロ 2』を希望します。
リヒト

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