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メリー・ポピンズ リターンズのJIZEのレビュー・感想・評価

3.7
大恐慌時代の困窮するロンドンを舞台に上から目線の華麗な魔法使い"メリー・ポピンズ"が再びバンクス家の教育係になり人生を謳歌する教えを描いたディズニー実写ミュージカル映画‼︎オリジナル版で主演を担ったジュリー・アンドリュースが席巻した功績には遠く及ばないが新星ポピンズ像のバトンを受け継いだエミリー・ブラントが敬意を示すかのような美声と軽やかなステップ,度々変容する表情など約54年ぶりの続編を形成されたイメージを損なわず見事に踏襲した点に感激した。まず本作は前作『メリー・ポピンズ(1964年)』から約20年後が舞台でバンクス家の長男が3児のシングルファーザーに成長し生活に困窮したバンクス家が家庭崩壊を招き兼ねない事態を主軸に世界観は強風の青空から彼女が舞い降り開幕する。また作品の図式そのものは"問題を解決する術に宿主の元へ旧来の親友が久々の帰郷を遂げる"『プーと大人になった僕(2018年)』にだいぶ近い。簡潔に評せば完全書き下ろしの新録で新たなポピンズ像の開拓に着地させた印象を受けました。続編とは名ばかりでステレオ仕様に正装されたポピンズが従来の指導方針を元にあくまで押し付けず子供たち自身に行動させる。家族のカタチを見つめさせる見方を変えた世界の素晴らしさを実感させる。誰もが忘れ去った子供心を吹き返らせるようなメッセージ性が盛り込まれていた。とにかく子供心に溢れる本編の無垢な世界観が楽しいし!超楽しい!!小難しい感想はこの作品には必要なかった。物騒で色々辛い現代の時代だからこそ小さい灯をともせ!。

→総評(ひと晩寝れば願った明日は今日になる)。
総じてメリーポピンズの完全書き下ろし新録という名目では続編というプラスα要素を抜きに本編を楽しめた。いわゆる時代に取り残されたポピンズを現代的に塗り替え正統進化させた代物である。ただ前作で活躍した現在93歳のディック・ヴァン・ダイクの旧ふぁんに向けた目配せや楽曲のオマージュ,前作での画角を意識したと思わせるデフォルメされた場面など高揚感を昂らせる意図されたシーンもマジカル満載で見所だったように感じました。いわゆる焼き直し程度に過ぎない箇所もあるにはある。前作ビッシリ観てないと関係性やポピンズがなぜあそこまで一家の大ピンチを無償で救うのか分かんない箇所も多かれ少なかれある。それこそ全編のミュージカル描写は舌を巻き中盤のアニメーションと実写が溶け込む「A Cover Is Not the Book」を披露するステッキを器用に使い回しながら歌唱するくだりは永遠に観てたかった。また終盤,ロンドンの大時計ビックベンのくだりでもタイムトラベル的なファンタジー性を物語にしっかり持たせつつ不可能を可能に書き換える術が描かれていた。ポピンズが魔法を駆使する描写はエンタメ的に楽しめるが家族が一致団結して行動するシーンや魔法に頼らないシーンはそれ以上に込み上げる感動があったように思いました。苦言を云えばミュージカル構造ゆえのご都合的に家族が急ピッチで難題をクリアする力業っぽい感じや続編製作が始動した時点から期待していた"チムチムチェリー"や"スパカリ"が…な事でしょうか。本作を観るにあたり一番期待していた点が大人の事情も相まってかスルーで空洞化していたので俺的にはかなり残念で勿体無く感じてしまった。また監督ロブ・マーシャルと云えば近年のディズニー関連で『イントゥ・ザ・ウッズ(2015年)』という多大なる功績を残していて次回もしポピンズの先を描いた第3弾が製作されるならP・Lトラバースの原作8冊を元に世界観の更なる飛翔した拡張を期待したくなる所感でした。
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