ちどり

メリー・ポピンズ リターンズのちどりのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

1963年版メリーポピンズを観たとき、「歌とダンスとアニメ合成とメリーポピンズの魔法をひたすら楽しむ映画」って言ったんだけど、良い意味で今回もそういう映画だった。
色彩がより明るく華やかになって、画面いっぱいが夢っていう感じ。
メリーポピンズたちが迷子になったとき、点灯夫たちのシルエットが浮かび上がるところ(ダンスが始まる直前のシーン)、前作の煙突掃除屋のダンスを思い出してゾクッとした。ああ、今から最高のシーンが始まるという予感。こんなに素敵な予感はないなあ。

前作を踏まえたネタがめちゃくちゃ多かったので、前作を観ている前提の映画だなあと思った。
「メリーポピンズ2」じゃなくて「リターンズ」なのも意味があるのではないかな……今回の主役はマイケルの子供たちではなくマイケルなんだなあと序盤からひしひしと感じるし。
メリーポピンズがお世話をしにきたのは「バンクス家の子供」で、もちろんマイケルもバンクス家の子供だから。
前作が子供たちのための物語なら、今回は大人の中にいる子供たちのための物語なんだろうね。

亡くなったマイケルの奥さんケイトが、本当に家族の中心で太陽みたいな存在だったんだなというのが、すごく伝わってくるのがめちゃくちゃ泣けました。マイケルも子供たちもケイトを愛していたし、もちろんケイトもそれ以上の愛を返していたんだろうな、と。
母親を亡くしてまだ1年なのに、子供たちがあんなにしっかりしてるのは、ケイトが「ここにいないだけ」という教えを残していたからだし、父親であるマイケルのことが大好きだから客観的に見て頼りない彼を支えてあげたいって心から思っていたからなんだろうな。
きっと元々はマイケルも1年前まではあんなに怒鳴ったりするタイプじゃなくて、ケイトが亡くなってからボタンを掛け違ってしまっただけで、そんなぐちゃぐちゃになっていた家の中を、メリーポピンズが綺麗に整頓して空気を入れ替えてくれたんだろうなあと思った。

ラストでウィリアムが風船を手に取るも「舞い上がる」ことができないシーン、あまりにも切ない。
最後まで銀行で捨て台詞を吐いて出て行ったときのように悪であり続けてくれたら、こんなに悲しい気持ちにはならなかったのに……。
「くだらん」とか「興味ない」とか言ってくれたらまだ良いのに、興味を持って自らお金を払って「試してみよう」って言っちゃうんですよ。
でも他のみんなのように風船は飛ばず、しなしなと地面に落ちるだけ。子供たちだけじゃなく周りのいろんな大人も舞い上がっているのに。
「舞い上がらない」メリーポピンズとは違って、「舞い上がれない」ウィリアムの置いていかれた子供のような姿がただただ悲しい……

最寄りの映画館で字幕をやってなくて吹替で観たんですが、マイケルの声めちゃくちゃ良かったです。誰だろ?って思ったら谷原章介さんだった。好きになっちゃう……(※元々好き)
ちどり

ちどり