Tラモーン

手紙は憶えているのTラモーンのレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
4.0
90分でこの満足度。


妻を亡くしたばかりのゼブ(クリストファー・プラマー)は認知症が悪化し、妻の死さえも忘れるようになってしまった。妻の死後から1週間後、同じ老人ホームで暮らす友人マックス(マーティン・ランドー)からから1通の手紙を渡され、その内容に沿って行動するよう伝えられる。その手紙にはゼブとマックスがアウシュヴィッツ捕虜の生き残りであること、そして2人の家族を殺したナチスの残党が身元を偽りアメリカで生き延びていることが記されていた。この手紙は生き残ったナチスへの2人の復讐の手引きだった。


https://x.com/kyofu_movie/status/1792913976080175596?s=46&t=QN58Th745kTtI_Yc3A3XIw

Xの映画オススメポストでこの映画を知って鑑賞。
めっちゃくちゃ面白かった。タイトルとポスタービジュアルのイメージはほのぼのヒューマンドラマ風なのに完全にサスペンス。ネタバレ厳禁。

主人公が認知症を患った老人なのにストーリーは復讐劇という意外性もありつつ、そこがしっかりと必然性に繋がっているのが熱い。

"友人からの手紙に列車に乗れと書いてある"

手紙の全貌をストーリーに沿って徐々に明かしていくという見せ方も上手だし、手紙に沿って記憶も曖昧なじいさんがエッチラオッチラ復讐に赴くという、一見してほのぼのしてしまいそうな展開を妙にスリリングに描くのも上手い。

手紙の中で疑わしい人物として絞り込まれた4人のコランダーを名乗る男たちも、実際に会ってみるとバリエーションに富んでいて淡々とした作品のアクセントになっている。
ナチスの虐殺行為を恥じるもの、捕虜として生き延び今では身元を隠しているもの、今でもナチスを信奉するもの。

戦時中ナチスやアウシュヴィッツに関わっていた人たちも様々な形で今の人生を積み上げてきたんだなと考えさせられる。

ネオナチ野郎のとこの緊張感ヤバかったな。ニコニコしていた雰囲気が消えるあの瞬間。嫌な汗が吹き出た。ディーン・ノリスの演技すごい。
信仰の違いによって会話が全く通じないっていうあの感じ、ライフル協会の会員が「銃を持ってれば身を守れた」っていうあの感じ、「差別じゃなくって区別だよ」っていう差別主義者のあの感じ。怖いね。


90歳の老人がなんでその身のこなし?とか、国境検問での銃の隠し方とか、妙に小慣れてるなと思うところがチラホラあったけどなるほどなというオチ。

クリストファー・プラマーの優しそうだけど目の笑っていない重厚な雰囲気がこの作品に重みを持たせてるように感じた。
どことなく嫌な予感からのスリリングなクライマックス、そして衝撃のラスト。

"貴様のしたことは謝って済むことじゃない"

これからご覧になる方は是非前情報は無しでどうぞ。
Tラモーン

Tラモーン