タナカリオ

手紙は憶えているのタナカリオのレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
3.9
「手紙は憶えている」…この主語である「手紙」の正体に気づくラスト5分の衝撃。

「忘却」×「復讐」×「ホロコースト」という新しい枠組み。
ホロコーストを題材にしながらも、他の映画と違い戦時中の映像や記憶は全く流れてこない。わかるのはゼヴとマックスの家族はアウシュビッツでナチス兵士に殺されたということだけ。
ゼヴは一体家族の誰を殺されたのか。アウシュビッツでどのような日々を過ごしたのか。それがわからないのは、ゼヴ自身が認知症で忘れてしまっているからだ。
観客はゼヴと同じ視点でこの掴めない復讐劇を観ていくことになる。

どうにもモヤモヤが晴れないが、ラスト5分でその靄が晴れると同時に、新しい闇が訪れる。

「認知症」という忘却だけではなく、私たちは知らないところで、誰かの復讐にも繋がる憎しみを「忘却」しているのではないか。
そんな警告ともとれるメッセージを感じた時、原題の「Remember」が深く目に焼きつく。
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