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チャーリー Charlieのくりふのレビュー・感想・評価

チャーリー Charlie(2015年製作の映画)
4.0
【それでもケーララ男は利他にあがく】

キネカ大森での自主上映に行って来ました。南インド、ケーララ州の公用語マラヤーラム語でつくられた「モリウッド」発、癒しのマサラムービー。

よかったです。インド映画の国内公開が途絶え、頭の皿干上がるカッパ気分だったので、とても潤いました。

弱きを助く無垢な正義漢と、行方不明の彼を探すうち、その軌跡から彼に惹かれてゆくヒロイン…という大筋は類型的なもの。しかしいつものインドパワーでぐいぐい、面白くみせてしまう。

ボリウッドとの差異は気になりませんね。逆にちょっと泥臭いところが可愛らしい(笑)。特にヒロインがね、はじめはどこのアグリー・ベティさん?という感じですが、だんだん可愛らしくなる。

インターバル後に「眼鏡を脱いで」からが魅力倍増。これがセクシーダンスの代わりですね。そもそも殆ど踊らずヘソも出しませんが、それよりこの、テッサという人物への共感を入り口に惹かれてしまう。彼女が独特の感受性を持っている、というのが効いています。

前半、異界に足を踏み込むような展開になりますが、怖気づかずにそこに魅力を見出してゆく。ちょっとマジックリアリズム風にも見える引き込みがいいです。インド映画の、こうした何気ない幻想性がやっぱり好きです。そこに笑いを共存させちゃうところもね(笑)。

ケーララ州の涼しげな美景を眺めるだけで、心癒されますね。残酷な「人魚」エピソード他、そこに人の暗い営みを認めつつも…。

主人公チャーリーは必ず天を仰ぎ諦めない。確信の能天気。インド映画ならではの人物ですが、娯楽映画はこうでなくちゃの型を改めて知らされました。

ラスト、「テッサの逆襲」の含みが好きです。物語ははっきり完結しますが、もしチャーリーとの道が、違う方角に逸れたら?…秘めた彼女の心を探りたくなる。改めて、本作がロードムービーだと思い出される瞬間。

…続く、白い砂漠をまっすぐ走るモロコシトラックの解放感!(笑)

もう少しチューニングしたらもっとよくなるのに、と感じたところもありましたが、豊かな映画なのでほぼ、満足です。

ところで、終盤のキーソングとなる「Chundari Penne」の響きがとても好きなのですが、どこかの映画で聞いた気がして仕方ない。本作のオリジナルなのでしょうか?

https://youtu.be/P8b6eoMu_Vo

<2016.5.18記>
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