ケンヤム

アリー/ スター誕生のケンヤムのレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
4.8
ただただまっすぐな映画だ。
この映画は視線をごまかさない。
画面映し出される彼らの視線はもちろん、私たち鑑賞者の視線すらごまかしてはくれない。
まっすぐな視線をぶつけ合う彼らを、私たちはそこに割り込むようにまっすぐに見つめている。
カメラの加害性のようなもの。彼らの関係を壊しているのは、二人だけの世界であったはずの彼らを映画館という場所に一箇所に集って真っ直ぐ見つめてしまっている私たちなのではないかと思わずにはいられない。
まっすぐに上昇していくアリーと、まっすぐに下降していくジャック。
ジャックは酒を飲みすぎて狂った。
アリーは彼に出会ってごまかすことをやめた。
彼らの奏でる音圧が終始私たちを圧倒するが、終盤その音圧から解放される瞬間が訪れる。
その時、私たちはごまかしのない12音の羅列を耳にするのだ。
これこそが歌なのだと思った。
12音という制限の中で、音を並び替えるごまかしの効かない遊び。
映画という視線を制限する遊び。
制限という加害性。
誰かに見つけてもらいたいという欲求。
ジャックがお父さんに見つけてもらえなかった革のベルトをアリーは見つけただろう。
ごまかしのない人生。
ウソはバレる。
魂の底までごまかしのない人間。
ごまかしのない物語。
ごまかしのない音。
ごまかしのない言葉。
ごまかしのない光。
ごまかしのない視線。
ああやって俺もまっすぐに誰かと、ごまかし合わず見つめあって喋りたい。
ケンヤム

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