叡福寺清子

アリー/ スター誕生の叡福寺清子のレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
3.6
ガガ姐御の演技はもちろんブラッドリー・クーパーの歌唱力も素晴らしいし,135分の長さを感じさせなかったブラッドリー・クーパーの演出力は初監督作とは思えなかった.初といえば本作はガガ姐御の初主演作でもあり,才能溢れる二人による化学反応が結実した作品といえよう・・・とまぁ普通的なレビューはこれくらいにしましょう.こんばんわ三遊亭呼延灼です.
私が本作で注目したのは,ガガ姐御の演技でもブラッドリー・クーパーの歌唱力でも提供される良き楽曲でもありません.ジャックのアル中っぷりであります.羨ましいのは,お付きのドライバーがいること.鯨飲しても飲酒検問怖くない!途中舗道で寝ているところを知人に発見されるシーンがありましたがドライバーはどうした!そのためのドライバーだろ!ステージ前後の飲酒は当然ですよね,何万人もの聴衆前じゃ緊張するし,終わったあとの開放感は一番のツマミでしょう.さらには聴覚障害の緩和にはアルコールが一番!でーーもーー,ほらぁやらかしたぁぁ,しかも嫁のグラミー新人賞受賞という晴れの舞台で・・・
誰もアル中治療を勧めなかったのか.「ジャックは酒さえ飲まなきゃいいヤツなのに」という会話も何度もあったでしょうに.アル中に限らず依存症への理解が進んでいるアメリカでもこの程度なのかと,軽く絶望しました.専門病棟での治療には時間が多く割かれていませんでしたが,本来なら入院時の拒否行動,離脱症状,AA参加への躊躇等々で後二時間・・・いやそれもう別の作品じゃん!退院後,将来への不安,泥酔下での行動に対する自責の念に満ち溢れる時に,かけられたレズの言葉.そりゃジャックだって絶望するでしょうよ.
あ・・・普通の人は「シャロウ」で感動すればいいですよ.本作をアル中目線で観たのは,たぶん日本で私くらいでしょうし.