まず映像が最高に良かった。
ちゃんと調べてないけど、おそらくたぶん16ミリで撮影しているのが最高だった。
なんかわからないが個人的にすごく気持ちが動く色と質感だった。素晴らしい。
もちろん内容にも合っていたと思う。本作での正解のない家族の問題や、複雑で自分でもわからなくなる自分の感情みたいなものにマッチしていた。
複雑にしてしまった家庭事情に翻弄される主人公。構成をパターン分けしながら観てしまう。
抱えてる問題は家庭ごと、そして個人でバラバラだ。
主人公の浅野忠信さんはどんな役でも「普通の人じゃないかも感」が残ると思っている。
そんな部分と本作の斜行エレベーターや階段のショットや16ミリでの青みがかった暖かみのない映像に合っていた。
男の嫌な所も、女の嫌な所も描かれているが、最高潮に盛り上がるわけでもなく、静かに丁寧に伝えてくる。
そして浅野忠信さんをはじめ、見事な演技で引き込まれる。
「そして父になる」ではないが、女性の子供を産んだと言う究極の強みに対して男は最後にどういう気持ちを持って苦難や心の葛藤を乗り越えればよいのか。
結局なるようになるが正しいかもしれないが、人間の希望が生んだ苦悩は世界共通の悩みだろう。
エンターテイメント的なインパクトは弱いかもしれないが、素晴らしい映像で心に残る作品だった。