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幼な子われらに生まれのmoのレビュー・感想・評価

幼な子われらに生まれ(2017年製作の映画)
4.5

『結婚してから、気付いたんですよ。』


TAMA映画祭にて鑑賞。

浅野忠信演じる主人公は二人の娘を持つ女性と再婚し、今度こそ幸せな家庭を築こうとするのだが…
ツギハギだらけの家族と、不器用な大人達がおくる、悲しくも温かいヒューマンドラマ。


久しぶりにいい邦画を観ました!
これ、同じ境遇の人が観れば共感の嵐だと思います。
そういう私は全然共感できる立場にないのですが、子供が新しい親や家庭を受け入れるのが簡単ではないこと、そして全くの他人が”家族”として暮らしていくことがいかに難しいかくらいはなんとなくわかります。


長女の言動はやりすぎなところもありますが、多少なりともそういった子供の感情に向き合うことは、親となった大人が背負わなければならない責任のうちのひとつなのではないでしょうか。
そういった意味では浅野忠信が本当にまともな大人を演じてくれていました。

というより浅野忠信以外の人達が不器用すぎる…
観てると「気持ちはわかるよ、だけどさ…!?」って、つい言ってしまいたくなるような困ったさんばっかりで。笑
でもそうなんです、気持ちはわかっちゃうんですよ!
その人視点で考えると仕方ないのかなーとか、たしかにこうなってもおかしくないなーってなっちゃうところがこの作品のすごいところなんです。


特に浅野忠信が宮藤官九郎演じる嫁の元旦那と話すシーンはギクッとした人もいるのでは…
「自分の帰りを待っている人がいること」が重たく感じてしまうときがあることとか、結婚してからじゃないと気付けないことがあることとか…
うまくいかない理由は家庭によって様々あれど、みんな最初は幸せな家庭を思い浮かべて結婚したはず。
誰だって最初は頑張りたかったんだ…そう思うとやるせなさが倍増でした。



それぞれの家族に、それぞれのルールや、歴史や、愛のカタチがある。
それらをなかなか受け入れられなくても、歪でツギハギだらけでも、それでも「家族でいる」ことに意味があると私は思います。
子供にとっては一番最初に与えられる成長の場として、大人にとっては最期の瞬間まで学びを得る場として…
そうして月日が経てば、家族という存在が財産になる日も、子が親の心を知る日もきっと来ると信じたい。

そして結局、血の繋がりを持たない他人同士が家族になるには、お互いが思い合って、理解し合って、気持ちの部分で繋がっていくしかない。

家族とは、ただ共に過ごすだけでなく、家族であろうとして初めて完成されるものなのかもしれない。
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