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ワンダー 君は太陽のスクラのレビュー・感想・評価

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
4.0
〈人は見た目じゃなくて中身を王道ストーリー化〉

遺伝子の異常で「普通」ではない顔で生まれてきた主人公オーギーと
その周りの人々で織りなす心温まりつつも色々と考えさせられるストーリー。

スター・ウォーズが大好きな少年オーギー(髪型もアナキンをリスペクトしている!!)は、先天的病気のため長らく学校に通わずにいたけれども、
5年生になるのをきっかけに学校に通うところからストーリーが始まる。
学校が実際に始まる前の慣らしとして、校舎の案内を遣わされた3人の同級生とのやり取りから既に不安しか感じられなかった。

人々から向けられる好奇の目をオーギーは大好きなスター・ウォーズと得意の空想を駆使して乗り切ろうとするも、
1人の少年が処理するにはあまりにも残酷すぎる現実の描写に初っぱなから観るのが辛くなった。

辛いのはオーギーだけではなく、「無理に学校に通わせなくても」と感じているお父さん、オーギーには外の世界にも接点を作ってほしいと
不安な心を抑えながらも学校に送り出すお母さん、そして、オーギーとは対象に「普通」の顔で生まれたお姉さんのヴィア、
それぞれがオーギーを起因とした葛藤や悩みがあり、ディサビリティを持つ身内がいる家庭の抱えている問題がリアルに描写されていた。

物語の冒頭ではあんなにたくさん出ていた空想の世界がいつの間にか消えていて、
オーギーが傷つきながらも、現実と向き合い進んでいくのがそっと表されていた。
最後にもう一度だけオーギーの心の大親友、とある大スターが出てくるけど、それはオーギー自身の空想というよりは、
彼を支えてきた空想世界、苦悩をともにしてきた世界そのものがオーギーを祝福してくれているのだろうなと解釈した。

実際に世間一般が「人」とみなす顔と異なる顔を持って生まれた人がこの映画を観たらどう思うのだろう。
物語の主人公オーギーは、何度も周りによってツラい思いをさせられるも、最後は王道ハッピーエンドと言える
終わり方を迎えてくれた。じゃぁ、現実もそうなるの?と考えたら、そうはいかないことも多いよね。
映画に対して「現実は違う」と言ってしまうのは、そもそも映画の本質を無視している感も否めないけれども、
実際にこの症例で苦しんでいる人がいる分、他の映画に対してよりも現実との乖離を感じてしまった。

最近観た別の映画の記者会見でとある俳優が「この映画を観ることで新たな夢を持ったり、考えを得たり、何か変わるきっかけが与えられれば良いなと思っています」と話していた。
確かに現実とは違うのかもしれないけど、それと同じようにワンダーも観た人が先天的ディサビリティを持っている人に
対する接し方を考えるきっかけになったり、実際に今苦しんでいる人が前を向けるきっかけになったりすれば良いなと思う。
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