マーくんパパ

元禄忠臣蔵 前篇のマーくんパパのネタバレレビュー・内容・結末

元禄忠臣蔵 前篇(1941年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

(前編、後編総合)忠臣蔵を溝口健二が描くとこうなる。多分、他の監督、例えば黒澤明が監督すれば全く違った映像表現になるのは必定。戦い描く事の不得手な溝口、女を描く事の不得手な黒澤。情報局提携の戦時作品ゆえ忠義に殉ずる志士は格好の戦意高揚の国策に合致する思惑を大胆な省略表現で映像化した溝口の不敵さ滲む作品。遠方からのロングショット、ワンシーン長回しと溝口監督らしい様式美は納得も、冒頭松の廊下刃傷シーン以外のハイライトシーン(主君浅野内匠頭切腹、吉良邸討ち入り、大石内蔵助以下四十七士切腹)全て省略の大胆さには驚いた。一番のクライマックス討ち入りを様子をしたためた手紙朗読で代替するなど前代未聞の離れ技、前編から今や遅しとクライマックス待ち侘びた観客も拍子抜けして驚いただろうネ。DVD 特典で付いていた当時建築監督として製作に携わった新藤兼人の回顧インタビューが裏事情を語ってすこぶる面白い。金に糸目を付けない情報局、原寸大主義で松の廊下殿中も能舞台もそのままのスケールで再現、討ち入り吉良邸作ったのに使わずボツetc。歌舞伎と能の様式美を取り入れセットには黒澤明も羨むような金の掛けようがよくわかる。忠臣蔵に女は不要もいつしか恋する男との今生の別れを悲しむ“おみのと十郎左”の悲恋モノに変わっているのも溝口節か⁈ こんな忠臣蔵見た事ないNo.1の貴重編でした。