真山青果の歌舞伎のため書下ろした傑作を、溝口健二が前進座を中心とした俳優で撮った作品の前編。
討ち入りにいたるメインストリートではない周縁をえがく独特の構成は原作の青果の手腕だが、それをうまく生かしながら映画ならではの見せ場をつくることに成功している。
溝口健二らしさといえば、舞台よろしくロングショットの長回しで撮ったその独特の映像演出の圧倒的な素晴らしさと、驚くべき贅沢なセットのスケールに集約されているだろう。
河原崎長十郎の無骨な芝居は、現代の役者が失ってしまった本物の「肚芸」というべき貴重なもの。