茅野

ミルピエ パリ・オペラ座に挑んだ男の茅野のレビュー・感想・評価

3.5
賛否両論(というか否が多かったように思う)ミルピエ時代のドキュメンタリー。個人的には彼や彼の時代に対する知識がほぼゼロだったので、フラットな姿勢で観た。

約2時間で、ドキュメンタリー映画としては比較的長め。主に新作制作の舞台裏に迫る。
現在はエトワールとして活躍しているダンサーも多く出演しているので、オペラ座ファンには楽しいかも。

映画を観る限りだと、ミルピエ芸監は人種差別を撤廃しようとしたり、階級制度を撤廃しようとしたり、医療体制を整えようとしたり、床材を張り替えたりと、改革はかなりいい方向に進んでいそうに見えるので、現実には何が「否」を呼んだのかはよくわからず、不思議に思いながら観ていた。
伝統を尊重すること自体は素晴らしいことだけど、差別を維持したり、無意味に過酷な環境を強いることは間違っていると思う。

高圧的ではなくフレンドリーな人柄で、団員との関係も悪くないように見える。
ただ、小道具や衣装係との連帯は悪く、これ小道具さんは裏で結構怒ってたんじゃないかと思った。

仕事が山積みで、秘書さん(とても美女である)にも休暇をあげて〜と思いつつ。

特にバレエの芸監は、誰が何をしても批判されるように思う。後任のオーレリー・デュポンもそうだし、ボリショイのフィーリン芸監なんか最たるもの。
その点で、為政者(こちらは一方で熱狂的な信者が湧くことが多いので、文字通り「賛否両論」になりやすい)よりも心労が溜まる職なのではないかと思う。
バレエ団員だけではなく、多忙な芸監をサポートする体制も同時に模索していくべきだと改めて思った。
茅野

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