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RAW〜少女のめざめ〜のsiaのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
3.6
ひとりの女の子の性の目覚めという世俗的なテーマを、どういうわけだかカニバリズムという題材を通して描こうとしたクレイジーな意欲作。

たしかに食欲と性的欲求って実は紙一重というか、たとえばゾンビ映画とかで人が喰われるシーンって妙にフェティシズムを感じる瞬間あるじゃないですか。ないですか。

サイコスリラーっぽい雰囲気を醸し出してはいますが、この映画の本質はティーンエイジャーの心や体の変化だったり思春期特有の葛藤を描いた青春映画(?)です。カニバリズム的な要素はあくまでもモチーフにすぎません。

そのため、現実的に考えるとナンセンスな部分は多いです。というよりも、そのあたりは敢えて荒唐無稽に描いていたような気がします。
なぜ主人公の肉食趣味が食人にまで発展したのかという論理的な理由はないし、交通事故の件もあんなにうまくいくはずないし、そもそも学校からしてまったくまともじゃありません。あんなところ絶対通いたくない。

そういう色々な突っ込みどころがこの映画には満載なのですが、それも含めてわざとブラックユーモアとして演出しているように感じました。
ムダ毛を処理してたらハサミで……そのあと指を……なんて冷静に考えると笑っちゃうな展開です。
一歩間違えるとコメディになりかねないストーリーを演技や音楽の力によってギリギリのところでシリアスに表現しており、その絶妙な匙加減が面白かったです。

そしてなにより、主演の女の子は素晴らしかったです。
序盤の垢抜けない少女といった姿から、後半での肉の味を知って「女」になるまでの変貌は見事でした。
可愛らしい外見ながら狂気や色気を孕んだ演技は魅力的で、また他の映画でも見てみたいなと感じました。

映像面でも見どころが多かったです。撮影や編集の仕方もそうですが、特にこの映画では鮮やかな原色が様々な箇所でユニークに使われており惹きつけられました。

最後の突き放すような唐突な終わり方も結構好み。
少し人を選ぶかもしれないけど、個人的には見れてよかったと思える興味深い作品でした。

ジュスティーヌちゃんが国勢調査員の肝臓をワインのつまみにしないことを切に祈る。